#04-04「遊園地といえば」

 ひとまず僕たちは、無言で綿飴をほおばるもこと遊園地を回っていた。

 多くの人出で賑わうだけあって、遊園地にはたくさんのアトラクションがあった。ジェットコースターやお化け屋敷などの絶叫系、メリーゴーラウンドなどののほほん系、はてはショーシアターなどもあり、さまざまな形でアトラクションを楽しむことができるようになっている。

 路上にはワゴンがたくさんならんでいて、さっきおじさんに声をかけられた綿飴のワゴンをはじめ、三十重がほしがっていたポップコーン、よく揚がった長いチュロス、小ぶりのかわいい饅頭などもある。食べ歩きしながら散策するのにはちょうどいい。

「ふおおお、どれもおいしそうであります!」

「もこにゃん、なに食べる? カレンお姉ちゃんが買ってあげるの」

「わたあめ」

「また綿飴かい……あんなちっちゃい身体のどこに入るのだ?」

「梅田、お財布」

「けっきょく僕が買うのかよっ! さっき自分が買ってあげるっていったじゃんか!」

 カレンお姉ちゃんに(僕の金で)買ってもらった綿飴をほおばるもこを連れて、僕たちはしばらくワゴンを見て回った。もこに買ってあげた綿飴はもちろんふつうの白い綿飴だったし、そこの販売員のおにいさんもカラフルな綿飴のことについては知らないようだった。僕たちはまるで雲をつかむような……いや、それこそ綿飴をつかむような手応えのない調査に、やや辟易しはじめていた。

「むうぅ〜、カラフルな綿飴なんて見つからないであります〜」

「そうだね。梅田、ほんとうにここにあるの?」

「うぅん、そのはずなんだけど……」

 僕はほおをかきながら答える。たしかに僕の調査では、この遊園地で華式綿花糖がつくられているはずだった。

「マフィアもそう簡単にはしっぽをつかませてくれないだろ。辛抱強く探すしかない」

「え〜、でも……」

「ちょっと息抜きでもするかい」

 その三十重の言葉に、カレンたちは「やったあ、するする〜っ」「遊ぶであります〜っ!」とはしゃいだ。僕もすこし調査に飽きてきていたので、「しかたないなあ」と同意する。

「どこ行く?」

「おまんじゅう屋さん!」

「アイドルの出るキャラクターショーだろう、常識で考えたまえ」

「お化け屋敷であります!」

「わたあめ」

 《ドルチアリア》三人と迷子幼女がてんでばらばらに答える。僕はそれらに「ちっちっ」と指を振った。

「みんな甘いな。遊園地といえばジェットコースターだろ」

 僕の言葉に、みな一様に「おおー」と感心の声をあげた。もこも興味深そうに目を光らせながら綿飴を食べている……ような気がする。気がするだけだ。

「梅田がまたまともなことを」

「きょうは空から蓬莱饅頭でも降るのかい」

「なんか腹立つであります」

 おまえら言いたい放題だな!「……わたあめ」きみは綿飴言い過ぎだからね!

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