Twitter300字ss Dirigo

 星がよく降る夜だった。月はなく、私は長く煌めく星の尾を眺め、世嗣の孤独に浸っていた。

 星見塔は街外れにあり、周囲が広く開けている。だから――街の方角に灯った炎を、ひとつふたつと数えることができた。

 十、二十、やがて炎はひとつの大波となって街を飲み込み、驚愕と恐怖で動けぬ私の胸に、ひときわ明るく輝く星が落ちた。


 あれから何年経ったのか、街の名も、翻る旗の色も、人々の言葉も変わって久しい。

 変わらぬのは胸に灯る星と、生き残りたちの恨みと怒りだけだ。涙も慟哭もない。正義だけが私たちを生かしている。


 今日も星が降っている。月はない。


 火矢が夜を裂いて飛んだ。胸の星が赤くあつく命ずるまま、私は流星となって街を灼く。



(300文字)


「Twitter300字ss」企画参加作品/お題「灯す」

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