雪虫
最低気温が零下をさす日が、とうとうやってきてしまった。気象庁が発表している様々な観測値ランキングのなかにある「最低気温ランキング」に注目する日々がもうそこまできているようだ。私の住んでいる地域はよく一位になることがあり、冬場はその他上位にひしめく寒い地域との争いが絶えない。
先日降った冷たい雨は山間部で雪となっていたようで、積雪を記録した峠がローカルニュースで流れていた。雪虫も飛んでいたから、たしかに降ってもおかしくはないのだけれど、もう寂しい季節になるのかと思うとやるせない。
冬の始まりに飛ぶ、降雪を予告するといわれている虫がいる。それが「雪虫」だ。雪虫が飛ぶと、冬タイヤの交換にいったり引きこもる支度をしたりストーブを焚いてもいいかな、という気になったりする。例年より発生が早く、十月だというのにあちらこちらに飛んでいるから、今年の冬は長いのかもしれない。いやだいやだ。
彼らの実態は綿毛のようなものがくっついたアブラムシの仲間である。とても小さいが、よく見ると薄い青がもこもことしたもので覆われているのがわかる。北海道にだけ生息しているわけではなく、関西にいたころに目撃したこともあった。関西以北にお住まいの方は探してみてはどうだろう。綿やほこりが飛んでいるかと思っても、よく見れば雪虫かもしれない。
ところで、アブラムシというのはとても不思議な生態をしている。のこり少ない文字数で語るにはいささか難しいほどだ。同じ種のアブラムシでも、羽があるものとないものがある。それはなぜかといえば、羽のあるものは飛んでいくためなのだ。なにを当たり前のことかと思うだろうが、羽のないものは飛ばない。みなで養分を吸い尽くした植物とともに死ぬ。細胞分裂によって増える時期と、子を産んで増える時期があり、たとえば子を産むための自分のコピーを作って死ぬ、ということもある。人の体温でも死んでしまう。短命で、はかない。
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