重い本3

 外は氷点下の夜。ベッドで寝ようとした男に、ハードカバーが言った。

「寒いわ。あなたの布団に入れて」

「明日、朝早いんだよ」

 と男は渋る。そこに、文庫が口を挟んだ。

「今夜は私よ。家に持ち帰っておいて、手も触れないなんて、失礼だわ」

「いや、だから明日は」

「新入りは黙ってなさい」

 ハードカバーの声はキツい。文庫も言い返す。

「重い本は疲れる、って嫌われるわよ」

「何ですって?」

 そこに漫画も割り込む。

「私だって、ずっとご無沙汰よ」

 おろおろする男を尻目にいさかいはヒートアップし、そして枕元に積まれた本の山が、男の頭に向かって崩れ落ちた。

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