逆鱗に触れる

 西洋のドラゴンが、東洋の龍に尋ねた。

「なぜ君は、あごの下のうろこさわられると、そんなに怒るんだい?」

 龍は目をらす。

「……カッコいいと思ってたんだよね、昔」

「何が?」

「これ一枚だけ、向きが逆さまだろ?」

 遠い目をする龍。

「秩序から外れた俺カッコいい! って思って、この鱗に髑髏どくろのピアスしてた時期があってさ……」

「刺さるんだ、ピアス」

「……思い出したくない過去を、暴かれた気分になるというか」

「ああ、怒ってたんじゃなくて、恥ずかしかったんだね」

 納得したドラゴンであった。


*****

 お題「逆鱗げきりん」。

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