私を殴れ、力一杯に殴れ

「セリヌンティウス」

 メロスは言った。

「私を殴れ。力一杯に殴れ。君が殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無い」

 セリヌンティウスはうなずくと、親友の言葉通り、力一杯に殴った。ぺち。

「……ぺち?」

 セリヌンティウスは非力だった。刑場に、気まずい空気が流れた。

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