咲人「お父さんの育児技能で堕ちなさい!眠りに!」
――私はヘタレで大馬鹿野郎です……‼
タイムアウトを挟んだところで事態は特別好転はしなかった。
アンは一応納得してくれたようで何も言わず咲人を見ている。
――逃げることは出来ないでしょうね。
けれどこのまま、このすべすべふにふにと接触している訳にはいかない。
――いや、ここで逃げてはいけません!
咲人は思い至った。この状況はアレと同じだ、と。
夜中眠れずにぐずる
――そうであるなら、アンをあやせばいいのです!
咲人は身体をアンの方へと寄せた。
同時に胸に当たられていた手をアンの頬に添えた。
「サキト……? んっ、んんぅ?」
頬を撫でる。滑らかな肌と艶やかな髪は触れている咲人の方が心地よさに酔いしれそうだ。
上下になでなで。後頭部を包むようになでなで。
――エルフの耳があると……少し撫でづらい。
指でひっかけたりしないように注意を払いながら耳もさわさわと撫でる。
「んっ、ん……! サキ、ト……」
――悪い感触ではない。これは
あとは自由な左手でオデコと前頭部を撫でてやればアンは遠からず
ぐずるえみを何度となく寝かしつけてきたお父さんの
アンを寝かしつけたのちに自身も安眠する――勝利の図式は描かれた。
――さあ、お父さんの
静かに勝利を確信したサキトの左手をエルフの細腕が弾いた。
ぱしんっ がしり
「えっ?」
アンは弾いた咲人の手首をしっかりと摑まえると、胸元へ引き寄せた。
ふにゅん
――なんで、そっちに⁉
「サキト、駄目……」
アンはとろんとした瞳であったが、咲人に抗議する。
「耳は、ダメなの……!」
――いやいやいや‼ もっとダメな場所に私の手ぇ押し当てられてますって⁉
「……サキトは
「え……⁉」
――
「サキト、なんて言うの?」
「え?」
「こういう場合のサキトの世界の言葉……」
卑猥では不満なんでしょう。そうエメラルドグリーンの瞳が語り掛ける。
「…………」
「サキト」
「【えっち】、ですかねぇ?」
「ふぅん……」
言葉だけでなく心情も噛みしめる様に頷くとアンは意地悪く笑った。
そしてサキトの耳元へ唇を寄せ、覚えたての言葉を甘く
「サキトの【えっち】」
「……面目、ありません……」
アンに頭を撫でられながら緊張の糸が切れると同時に咲人の意識は黒に染まっていってしまった。
…
………
……………
…………………
「サキトのばか」
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