仲直り

 エルフ耳を垂らしてアンは不安げに咲人の様子をうかがっている。

 咲人は彼女を刺激しないように出来るだけ優しく呼びかけた。


「アンビエントさん」

「……サキト」


 揺れてばかりだったアンの視線が咲人へと向けられる。

――あんなことでこんなに不安がる娘を放っておくなんて、ダメだな俺は。


「降りて、きませんか?」

「うん……ちょっと、待って」


 頷くと彼女は木の枝からふわりと跳び下りた。

 地面に接触するほんの少し前に、ぶわりと風が巻き起こりアンの落下が減速する。ビル三階ほどの高さを魔法を使い難なく着地する。そう思われたが――


「あっ……」


 動揺から着地の瞬間バランスを崩しアンは躓きそうになる。

 倒れかけた彼女の身体を咲人はさっと前へ出て支えた。


「あっ、うぅ……!」


 抱き留められた瞬間に目が合う。そのままアンは完全に俯いてしまった。

 咲人はどうしたものかと考え、結局そのまま話すことにした。


「アンビエントさん、さっきはすみません。そんなに怒ること……なかったと思います。ごめんなさい」

「うん。私も、ごめん、なさい」


 お互いに謝罪するとアンは咲人を見上げる。


「サキ……ト。んっ……」


 咲人の名前を口にすると瞳を閉じる。まるで恋人にキスをねだるかのような仕草だ。しかし、彼女の欲していることは違う。


「はい」


 咲人はアンの肩を引き寄せる。アンのおでこが咲人の胸に収まる。

 すると、彼女はぐりぐりと額を擦りつけてくる。


「ん~~」


 飼い主に甘える犬猫のようなアンの姿に咲人は安堵した。

 無事に仲直りは出来たようだ。

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