アンビエント・ゲイル・シャフト①
エルフとは森の賢人である。人間族を凌駕する魔力を有し、長寿ゆえに魔術や知識面で秀でている。身のこなしは俊敏。個人差はあるものの器用な者が多い。また、容姿端麗との声も多く聞く。ぐへへへ……!
――ライトノベル『俺×異世界』より引用
「おおむねその通りでしたけどね……」
アンビエント・ゲイル・シャフト。咲人が異世界で初めて出会ったヒトだ。
長身の者が多いエルフにしては小柄らしく、身長百七十の咲人よりも頭ひとつ分ほど小さい。
――そうでもないか……というのは下種な考えか?
エルフ族の女性はそのほとんどがスレンダーな体型をしている。
一方でアンビエントは出るところは出ており、それでいてエルフらしく四肢がスラリと伸びているので女性的なスタイルが強調され蠱惑的な身体つきだ。
――アメリカンともヨーロッパ系とも違う、不思議なバランスですね。
思春期の男子には目に毒な光景だが、老齢な咲人は冷静に観察を続ける。
多くのエルフ女性と同様にワンピースのような衣装を身に着けているが、アンビエントはその下にショートパンツを穿いている。野を駆け、木登りなども得意な彼女の性格が表れているように思えた。
「くぅぅぅ……んっ」
身じろぎと共に胸がたゆんと揺れる。
――魔力というモノはどこに蓄えられるのだろう? 心臓のあたりか?
ふいにアンビエントが魔法を発動させたときの光景が脳裏をかすめた。
「……っ!」
咲人の背筋が震え、首根っこが泡立つ。
思えばあの時、あの瞬間に異世界などという荒唐無稽なものを彼は受け入れたのだろう。
目の前の少女は天使のように愛らしい見た目をしているが、ひとたび魔法という奇跡を行使すれば悪魔にもなれる。
そう思うと咲人の手がひとりでに握りしめられた。
その拳は所在なく揺れ動き、それからアンビエントの首筋へと伸びた。
咲人はその光景をどこか他人事のように眺めている。
――俺は……なにを……?
「サキ……と……」
眠るアンビエントの口から漏れ出た言葉に咲人はハッとする。
乱れた呼吸を整えると誤魔化すように彼女の頬を優しく撫でた。
「……んんぅ?」
すると、アンビエントの緑の瞳がすぅっと開かれた。
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