剣の道

第18話 剣の道 01

    ◆



 むかしむかし。

 あるとき、『剣聖(けんせい)』と『剣豪(けんごう)』がいました。

 だけどさいしょから二人はそうよばれていたわけではありません。

 さいしょは二つ名などなく、げんきな二人のおとこのこでした。


『むさし』。

『ふりっと』。


 ただし、才能はちいさいときからありました。

 そんな二人はおさななじみでした。

 二人はいっしょに剣のうでをきそいあってそだちました。

 何年も。

 何年も。

 そして二人はわかくして剣の道のてっぺんへとたどりつきました。

 二人はだれにもまけず、ずっとかちつづけました。

 ほかの人には、です。

 しかも二人のたたかいのけっかはずっと『ひきわけ』でした。

 かってもいないし。

 まけてもいませんでした。

 剣ではっきりとしたしょうぶなど、一つもありませんでした。

 どちらがうえではない。

 どちらがつよいわけでもない。

 そんな二人はあるときから、まわりから本名ではなく、二つ名でよばれるようになりました。


 いつしかむさしは『剣聖(けんせい)』と。

 いつしかふりっとは『剣豪(けんごう)』と。


 おたがいがおたがいのやり方で、さらにつよくなっていました。


 『剣聖(けんせい)』はなかまといっしょにつよくなっていくことを。

 『剣豪(けんごう)』はせかいを回って、ひとりでたたかうほうほうをさがしてつよくなっていくことを。


 それぞれがえらんで、さらなるつよさをてにいれていきました。

 それでも、二人のつよさはいっしょでした。

 おたがいがおたがいに、ちがうやり方でつよくなっていく。

 つよくなっていく二人に、あこがれていく人もふえていきました。


 でも。

 ある日、二人はかんぜんにてきとなりました。


 てきになったりゆうは、ただ一つ。

『魔物(まもの)』がいたからでした。


 『魔物(まもの)』はにんげんをおそいます。

 だれでもおそいます。

 りゆうもなくおそいます。


 そんな『魔物(まもの)にどうしてなのか』『剣豪(けんごう)』はみかたをしました。

 『魔物(まもの)』をたおそうとする人々を、つぎつぎとせんとうふのうにしていきました。

 そのりゆうはわかりません。

 だけど、はっきりとてきになりました。


 だから『剣聖(けんせい)』は『剣豪(けんごう)』とたたかいました。

 『剣聖(けんせい)』は一人じゃありませんでした。

 なかまがいました。

 そのなかでも、ゆうめいな人が二人いました。

 『神速(しんそく)の剣士(けんし)』いさむ・ごどう。

 そして『剣の歌(うた)い手』にしてさいこうにかっこいい はーろっく・うぃりすさま。


 『剣聖(けんせい)』といっしょ、おもにこの三人で『魔物(まもの)』をたおしていきました。

 そしてたたかいの日々がつづき。

 ついに『剣聖(けんせい)』と『剣豪(けんごう)』がたたかいました。

 これはあとに『剣戟収攬(けんげきしゅうらん)の戦(たたか)い』とよばれました。


 けっかは、あいうちでした。


 だけど、このたたかいのあと『魔物(まもの)』はすっかりと人のまえにあらわれることがありませんでした。


 せかいはへいわになりました。


 めでたしめでたし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る