而して、斯様になりぬ
あらあら――。
アトラク=ナクアはレベッカとイザベラのためだけに存在するはずの論理空間を、
振り返ったアトラク=ナクアは、興味深そうにその三つの人影を眺めまわす。
「どうするの? このまま見ているの?」
「あなたは?」
ツァトゥグァが問い返す。アトラク=ナクアは微笑む。
「私の出番はまだまだ先、あるとしてもね。新しい時代のディーヴァたちにこそ、私は今、すごく関心を持っているのよ」
「そのディーヴァたちのためにも、この事態を何とかした方がいいのではない?」
「さぁて」
ツァトゥグァの揶揄するような問いかけを流し、アトラク=ナクアは銀髪を揺らす。ツァトゥグァはその豪奢な金髪に手をやって、傍らに立つベルリオーズを横目で見た。
「あなたの関心はむしろ、このジョルジュ・ベルリオーズにあるのでしょう?」
「ふふふ、あなたにしては珍しく的外れじゃないわね」
アトラク=ナクアが皮肉を込めて応える。
「私がジョルジュ・ベルリオーズに関心があるというのは事実よ」
「僕に関心があるのはさて置くとしても、必要以上の干渉は好ましくはないね」
左目を赤く輝かせながら、ベルリオーズは
「僕は別にどうなったって構いはしないのさ、こんなことは。ただ、ここでディーヴァが交代してくれた方が、どちらかと言えば都合が良い。それだけなんだよ」
「ならば、
「創造したのか、かい?」
「こ、肯定です」
ARMIAは委縮する。ベルリオーズはARMIAに身体を向け、一歩、二歩と近付いた。
「僕の計画はミスティルテインが手に入らなかった時点でとっくに変わっていたんだよ。そしてミスティルテインになるべきだった素材は、図らずもエキドナに変性した。そうなった時点で、僕にとってはヴェーラもレベッカも、とうに用済みになっていたということさ」
「……ならば
「何のため?」
ベルリオーズは目を細めた。左目が
「そうだな、そう、マリアは別にどこで投入したってよかったんだ。ディーヴァとして、新世代のディーヴァたちを統率できる立場に収まってくれさえすればね」
「ならば!」
ARMIAは涙目でベルリオーズに詰め寄った。
「ならば、なぜ! 私に姉様方への
「その方が僕にとって都合が良かったからさ。不満かい?」
ベルリオーズは有無を言わせぬ口調でそう言った。ARMIAは俯いて黙り込む。握りしめられた拳が小さく震えていた。
「あらあら――」
アトラク=ナクアはふんわりと肩を上げる。
「あなたが父親だというのなら、これはさぞかし非道な所業ということになるのでしょうね」
「僕は別にそんなことには興味はないんだ」
ベルリオーズは冷笑と共に言う。
「僕はただ、この世界の様態を変えたいだけなんだ」
「うふふ、様態、ね」
銀の悪魔は、その髪を揺らしながら哂う。
「
「その様すら、君は君の予見の範疇だと言うわけだ。なるほど、悪魔的だね」
ベルリオーズは哂いながら言った。そこのツァトゥグァが口を挟む。
「でもね、あなたたちのその
「なるほど、君たちは悪魔だ」
ベルリオーズは挑発的に手を叩く。
「なれば僕を後ろから墓穴に放り込むくらい、簡単な事だろうさ」
「そんなことは私がさせません」
ARMIAが黒い瞳をぎらつかせながら言った。ARMIAはジョルジュ・ベルリオーズを第一に保護するように設計されているのだから、この言動はもはや本能に根差したものだったと言える。アトラク=ナクアはその様子を見て、すぅっと目を細めた。
「あなたのような人形風情に、私たちが止められるとでも? いえ、まだその時とは言えないけれど」
「なに……」
ARMIAは身構える。その右手に長大なライフルが出現しようとする。
「やめておきなよ、ARMIA」
ベルリオーズがその小さな肩に手を置いた。
「この二柱はね、僕らが戦えるような相手ではないんだ」
「わかっています、しかし――」
「無駄な戦いなんて、しないに越したことはないのさ」
ベルリオーズは
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