#23:それぞれの選択
#23-1:闇の中のトリニティ
ARMIAの振り子
床も壁も天井もない。色もない――黒も白もない。上下左右の概念すらない。それは空間と呼べるのだろうか。それすら判然としない。ただ在るのは音だ。水のように意識を満たす音だけがある。
ARMIAは漆黒の髪を
うんざりだ――。
ARMIAが呟いた。まるでイザベラの口癖のようなその言葉に、ARMIA自身が驚いた。だが、それはマリアでもアーマイアでもなく、ARMIA自身の本心であった。
そもそも、マリア・カワセも、アーマイア・ローゼンストックも、存在すらしていない。いわば
アーマイアは残酷な兵器を次々と生み出す。マリアはそれをディーヴァとして受け止め続ける。言ってしまえば、自作自演だ。滑稽で壮大で残酷な自作自演を強要されながらも、二人の
ベルリオーズはARMIAにはっきりと言ったのだ。
そのギリギリのラインに立ち続けている君は、それだからこそ価値がある。ゆえの不確定要素であり、それはつまり、奴らの予測の範囲を超える結果をもたらすだろう。だから君は、マリアであり、その他方ではアーマイアであり続ける。君はこの役割から逃れることはできないし、逃れようともしないだろう――と。
もしアーマイアが、私自身ではないのだとしたら、私はバランサーとしての役割を全うすることはできない。でも……。
ARMIAは薄く目を開ける。ほとんど黒色の瞳に反射するような光はない。光はないのに、ARMIAの姿だけは、ARMIAにとっては嫌に鮮明に見えていた。ARMIAは自身の姿を客観的に眺めているという視点をも持っていた。
マリアは……いえ、私自身は、あのディーヴァたちを
だけどそれでも。
私以外がアーマイアを演じるのは。
それに今さら逃げることもできはしない。
ならば、マリアに賭けるしかない。私自身は、観測する事しかできないのだから。
「私がやるしか、ないのですね……」
うんざりだ――。
ほんとうに――。
ARMIAが呟くと同時に、その姿は消えた。
その世界はそこで
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