#01:歌姫が生まれる理由

#01-1:訃報

報せ

 着艦直後に入ってきた情報に、カティは我が耳を疑った。真紅の愛機から飛び降りて、ヘッドセットを装着する。


「姉さ……じゃない、ルフェーブル大佐が暗殺されただって!?」

『間違いありません。参謀本部もハチの巣をつついたような騒ぎになっています』


 カティは汗に濡れたままの真っ赤な髪を振り乱し、母艦<リビュエ>の艦橋へと上がった。それを待ち構えていたように、情報管制官がカティの所へと速足で近付いてくる。


「狙撃です」


 開口一番もたらされた情報に、カティは思わず息を飲む。情報管制官はタブレット端末を見ながら、淡々とした口調で説明を続けた。


「胸を撃ち抜かれ、ルフェーブル大佐は即死状態だったとのこと」

「即死……」


 呆けたように繰り返すカティ。情報管制官は頷く。


「現場には、ヴェーラ・グリエール、レベッカ・アーメリングの二名および、二人の護衛官が居合わせたとのことで――」

「ヴェーラたちが!?」


 カティは弾かれたように我に返った。未だひかない汗を無意識に払い除け、唇を噛みしめる。


「二人は……無事なのか」


 我ながら虚しい問いだ、とカティは考える。答えは分かっている。物理的には無事なのだ。だが、二人の――特にヴェーラの心はズタズタにされたに違いない。カティは拳を握りしめる。手の甲がミシリと音を立てるほどに。


「ほかに怪我人はいないようです、大佐。犯人も未だ見つかっておらず、犯行声明の類も上がってきてはおりません」

「そう、か……」


 カティは苛々とした様子で前髪をかき上げ、そしてゆっくりと情報管制官に背を向けた。


「少し頭を冷やしたい。自室に戻る。何かあったら連絡をくれ」


 カティは平坦な口調でそう言うと、艦橋を後にした。

 




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