セイレネス・ロンド(3)/歌姫は背明の海に

一式鍵

#00:プロローグ

#00-0:アウフタクト

新雪を染める

 エディットはどうしちゃったの!?


 わたしは叫ぶ。ベッキーがわたしをきつく抱きしめる。赤く染まった新雪。その上には、エディットが目を見開いて倒れている。わたしはベッキーを振り払って、エディットに駆け寄った。ジョンソンさんかタガートさんの怒鳴り声も聞こえたが、わたしは無視した。


「ごめん、ね、ヴェーラ、ベッキー……」


 エディットの震える声。震える手。わたしは一も二もなくその手を掴む。わたしの髪の先が、エディットの血を吸って赤く染まる。


 私はエディットの震えを止めようと手に力を込める。そして、「だいじょうぶだよ!」……と、叫ぶ。その言葉がどれほど空虚であるかなんて、わたしは理解している。でも、これしかできない。できないんだ、わたしには。


「まだまだ、遊びに来たら、だめ、だから、ね」


 エディットの震えが止まる。


「うそだ……」


 わたしはその手を握りしめる。


「うそだ!」


 救急車の音が聞こえる。


 


 

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