第11話 学園社交界

私たちが入学して、1ヶ月ほど過ぎました。

その間、教養学や各種の実習などの講義を受け、学園生活も慣れてきた時、2校合同による学園社交界の開催が発表されました。


学園社交界とは年2回、生徒会が主催する学園のパーティーで、当日はヴィクトリアの生徒が主役、スチュワートの生徒が裏方と接待役として、本格的な実践形式で行われる授業なんです。


ヴィクトリアの生徒は何もしてないじゃないの!って思われがちですが、当日までの準備は2校合同で行いますし、当日の調理チームの一部と音楽隊はヴィクトリアの生徒が担当するんです。


それに貴族のご令嬢やご子息様でも、お屋敷でのパーティーに出たことはあっても、他家のパーティーへの参加は14歳から15歳が普通とされているんです。

その為、ヴィクトリアの1、2年生にとっては、このパーティーが本番さながらの実習となるのです。




学園社交界の通知が貼り出されてからというもの、教室内は連日大騒ぎなんです。

なんといっても学園の一大イベントの一つなんですから!


「私たちのクラスってどんな役目が当たるんだろう?」

「おそらく1年生は裏方のお仕事ではないでしょうか?表の接待役は2年生がされると思いますので。」

たしかに、いくら学園のパーティーとはいえ、主役の方には貴族様が大勢おられます。

そんな方々に、入学して1ヶ月程度の生徒が接待をして、失礼があってはいけませんから。


「当日侍女のお仕事となると。」

「ホールと控室の接客、調理の補助、あと音楽隊?」

私のつぶやきにココリナちゃんが指折、仕事の内容を上げていきます。


「音楽隊の皆さんは全員ヴィクトリアの生徒がされるみたいですよ。」

「そうだよね、よかった、私楽器なんて使ったことがなかったから。」

カトレアさんが音楽隊のことを説明してくださいます。


「普通、楽器なんて使えないもんね。」

「そうですね、母はピアノが弾けるみたいなのですが、私は楽器を使った事がございませんから・・・。アリスさんなら何かできるのではないですか?」

リリアナさんが私を見ながら聞いてこられますが。


「いちおピアノとヴァイオリンぐらいなら・・・。」


「うん、アリスちゃんならそうだと思ってたよ。」

「そうですね、アリスさんですから。」

「まぁ、当然ですよね。」

「大丈夫です、ちゃんと分かっていますから。」

「「「「 ふふふ。 」」」」


えっ!?何この一人取り残された感は!?




「そういえば、エスターニア様が毎年スチュワートの生徒からも数名、パーティーの主役へご招待をされるといわれてましたが。」

「エスターニア様って誰なんですか?」

リリアナさんの何気ない言葉に出てきた名前に、ココリコちゃんが問われました。


「あっ、ごめんなさい、ついいつもの癖で。私がお仕えしている公爵様のお嬢様なんです。今年は生徒会役員をされておられますので。」

「たしか今、ヴィクトリアの4年生でしたよね?」

エスターニア様はお姉様のお知り合いの方で、何度かお城のプライベートなお茶会に来られた時に、お話したことがあるんです。とても優しいお方でしたからよく覚えているんです。

ちなみにお兄様の同級生でもあります。


「アリスちゃん知ってるの?」

「うん、お姉様のお知り合いだったので。」


「えっ?エスターニア様って公爵様のご令嬢になるんですよね?」

「そうだけど?」

私何か変なこと言ってる?


「ふふ、ココリナさん、アリスさんに私たちの常識を求めてはいけませんよ。」

「ふぇ?どういうことなんです?」

「あぁ、うん、そう見たいですね・・・。」

私の知らないところでリリアナさんの説明にココリナちゃんが納得されています。

どういうこと?


「それで、スチュワートからも出席するというのはどなたになるんでしょう?」

私が頭を捻っていると、パフィオさんが話しを切り替えてくださいました。


「おそらく、スチュワートに通われている貴族様が出席されるみたいです。」

「スチュワートに通われていると言っても、貴族様ですから社交界の経験はしておいた方がいいでしょうし。」

カトレアさんのいう通り、貴族に生まれたからには、いずれ社交界に出る機会は多くなるはず。

スチュワートではあまりそういった経験は出来ませんから。


「ということは、このクラスではイリア様・・・ぐらいでしょうか?」

私の思い当たるのは男爵令嬢のイリア様、他のクラスや2年生にもおられるのでしょうか?


「1年生ではイリア様とあと数名のお名前が上がっているとお聞きしましたが・・・。」

そう言って、私の顔を見てくるリリアナさん。

いや、私は出ませんよ?


「アリスちゃんは選ばれていないんですか?」

ってココリナちゃん、何聞いてるの!恐れ多くて出れるわけないじゃん!


「ごめんなさい、それは私の口からは申せないんです。」

そういってリリアナさんが申し訳なさそうにされます。


「ごめんなさい、私困らせるようなことを聞いてしまって。」

「いえ、私の方こそごめんなさい。」

お二人で会話をされていますが、ここはちゃんと訂正しておかねばなりませんね。


「あのねココリナちゃん、何かまだ勘違いをしているかもしれないけど、私ただの平民だからね?」


私の言葉にそれまでリリアナさんと、ココリナちゃんの話しを聞いていた4人が一斉に私の方を見て。


「うん、アリスちゃんの言ってることはちゃんと分かってるから。」

「そうですね、アリスさんはそのままでいいんだと思いますよ。」

「アリスさんはとりあえず平民、と言うことで分かっていますので」

「とりあえず、私たち以外には自分は平民だとか言わないでくださいね。」

「「「「 ふふふ。 」」」」


えっ!?何このデジャブは!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る