作者様の『桜月夜』シリーズのうち、『酔わされて』は樹先輩の視点で若々しい恋が綴らるのに対し、本作は樹の後輩である明るく可愛らしい女の子、咲の視点で綴られる物語です。
大学時代。次第に心も体も大人になっていく時期の女の子の、柔らかな心。微かな風にも揺れるようなその心の動きが、咲という明るく素直なキャラクターの個性に裏打ちされ、とても自然で可愛らしい初々しさを持って描き出されます。
憧れの先輩を眼の前にしながら、自分の好みではないはずの先輩へとどうしても動いてしまう咲の想い。頭ではどうにもならない恋心の複雑さ、悩ましさ。恋って、こんな風に甘くて苦い…そんな思いが、読み手の心にも瑞々しく蘇ります。
そして、美しい桜月夜の中、咲の想いの行き着く先は——。
若々しい恋心を堪能できる、柔らかな幸せに満ちた物語です。
恋愛物で難しいのは男女関係や移ろう心の有様だと個人的には思っております。そして人間の複雑な関係や心理描写が苦手な私は中々に手が出せない分類でもあります。
しかし、此方は人間の心の変わり方を気難しい変化として捉えず、あっさりとした流れで自然と変化を受け入れるという心変わりが返って魅力的でした。
人間には誰しもが憧れと呼べる対象を抱く事はありますが、それが恋慕へと発展するとは限らないという典型例を描いた恋愛小説でございました。
また本文もスマート且つ短めに纏められているおかげで、サクサクと読める点も嬉しい所です。時間に忙しく、そして爽やかな恋愛小説を読みたい方は一度読んでみて下さいませ。
『桜月夜に酔わされて』の別視点ストーリー。こちらは咲ちゃん視点ですが、どちらから読んでも楽しめます♬
明るく素直で友達思い。恋愛に関しても奥手で真面目で、幸せな家庭環境で育ってきたんだろうなぁということが伝わってくる咲ちゃん。
憧れの要先輩といつもつるんでいるチャラい樹先輩にからかわれてしまいますが、チャラいだけではない樹先輩の一面に触れ、少しずつ気になりだしていって……。
自分とは育った環境も恋愛観も異なる、近くにいるようで遠いひと。
そう思っていたのに、夜桜の引力が二人を引き寄せて──
ラストシーンは花びらの舞う幻想的な美しい世界の中で、きっとあなたも酔わされてしまうはずです。
これは『桜月夜に酔わされて』(https://kakuyomu.jp/works/1177354054883453074)の物語を別視点で描いた小説で、前作ではチャラい先輩・樹が主人公でしたが、今回は純粋な女の子・咲ちゃん視点で描かれています。
女の子が恋に落ちていく過程を丁寧に描いていて、咲ちゃんの可愛さに改めて惚れこんでしまいました。
そして、前作ではあまり語られなかった樹の悲しい事情も明らかになり、樹と咲ちゃんの2つの物語が見事に交錯していきます。
桜舞う夜から始まる、素敵な恋の物語をあなたも堪能してみたらどうでしょうか?