第16首 かばん

回辺たべいで

おいしそうある

草分くさわけもの

ひとまとまりに

あしたふれんず


【現代語訳】

行く先々で皆を和ませる君は

背負った鞄がその名の由来でありトレードマーク

追いかけ、付いて行こうとする者の絶えない

開拓者で革命児なけものである

ヒトの長き不在の末に現れた君は

皆の心をひとつにし

悪しきものを退けるだろう


【解説】

「回む(たむ)」:ぐるりと巡る、迂回する

「辺(べ)」:…の辺り、…の方

「回辺(たべ)」:作者による造語。「行く先々」の意。回むる辺→回む辺→回辺、という変化をしたという想定。

「和ぐ(なぐ)」:心穏やかになる、なごむ。「和いで」は「和ぎて」のイ音便。


「おいしそうある」:掛詞。「負いし証ある」と「追いし添うある」

①「負いし証ある」:背負ったがよく似合う

「負い(おい)」:「負う」の連用形。「背負う」または「似合う、ぴったり合う」

「し」:過去の助動詞「き」の連体形。

「証(そう)」:しるし、証拠、あかし。ここでは名前の由来であること、特徴であることを示す。


②「追いし添うある」:追いかけ、付いて行こうとする者がたくさんいる

「追い(おい)」:「追う」の連用形。追いかける、追いつく。

「し」:強意の副助詞

「添う(そう)」:付け加える、付き従う、寄り添う、結婚する。

この「添う」は連体形だが、掛かる名詞(体言)が省略されている。「もの」や「とも」を補うとよい。


「草分け(くさわけ)」:初めてその土地を開拓すること。物事を初めて起こすこと。またその人。


「ひとまとまり」:掛詞。「一纏まり」と「人間止まり 」

①「一纏まり」:複数のものが一つの集団としてまとまっているさま。

②「人間止まり」:人の訪れが途絶え、月日が経った後

「人間(ひとま)」:人の訪れが絶えていること、疎遠であること。

「止まり(とまり)」:果て。行き着く所。最後まで連れ添う人。


「あし」:掛詞。「悪し」と「足」

①「悪し」:悪い。不都合である。

②「足」:脚、歩み、下部を支える部分。

「倒れ(たふれ)」:「倒る」の連用形。倒れる、挫ける、滅びる。

ここでは悪しきものの侵攻が挫かれることを指す。

「んず」:推量、意志、仮定、当然、適当の助動詞「むず」の異型。ここでは推量。

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