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 友達と遊ぶ、というこをしたのは、もうずっと幼いとき。 両親が健在で、祖母も生きていた頃に、なんとか女の子に紛れてお人形遊びをしたくらいで、それが変だといじめられ、女の子達も「ママからとしかずくんと遊んじゃだめって言われたから。」と避けれるようになってから、他人の目を見ることすらやめてしまいました。

 寮では同室の子が居るときはひたすら勉強をし、ゲームも漫画も興味がなかったので、成績はいつも群を抜いて首位に立っていました。 暗く、心と体がちぐはぐで、ガリ勉な私を、クラスメイトはいじめるのも飽きたようで、たまに思い出したように殴ったり罵声を飛ばすくらいで、普段は存在を忘れ去られていました。 私としてはそのほうが有り難かったのですが、たまに先生や、同じように教室の隅で存在を消しているような奴らが話しかけてきて、そのたび胸にどっしりとした重りがのしかかりました。

 中学は単位がないので、嫌な行事はサボることが出来ました。 が、高校はそうもいかなくなるのが、憂鬱で仕方ありませんでした。

 だからなるべく単位にうるさくなくて、行事に大した力を入れていない学校を探しました。 学力に関してはどこでも問題はなかったので、担任からはしつこく進学校を勧められましたが、結局祖父の家から徒歩十五分ほどの、名前さえ書けたら入れるような男子校に決めました。

 男子校に決めたのは、最終進路を決めるとき、とある女子から告白されたのがキッカケでした。 その女子のことは名前も覚えていなかったけれど、三年間ずっと私を見ていて、私と同じ高校に行きたいから必死に勉強した、と言っていました。 もう何年も髪を切っていない私よりも遙かに長い黒の髪を可愛いリボンで結んで、私が欲しくて仕方なかったセーラー服を三年間着ながら、私を見ていたというのです。

 せめて、クォーターだから、とか、お金持ちだから、とか、そんなくだらない理由だったのなら、何も気に止めなかったのかも知れません。 でも、彼女は三年間も私のことを「男」として見つめていたのです。 胸のついたその体で、穴のあいたその股で、私と唇を重ねたいと、服を脱ぎ捨て体液を交えながら、性器を繋げて「愛してる」なんて言葉を囁き合いたいと、そう思っていたのです。

 彼女は、私の体には生理がこないと、胸は膨らまないと、三年間見続けた結果、そう判断したのです。

「やめて。」

 世界に鈍い色の花火が打ちあがって、まるでトランポリンの上に立っているように、目の前がくらくらとして。

「松葉さん。」

 会いたい。 包帯に巻かれ、皮膚の爛れた、あの美しい人に会いたい。

「松葉さん。」

 あの、優しくて残酷な空間に行きたい。

「ごめんなさい。」

 こみ上げてくる吐き気を飲み込みながら、誰も私をそんな目で見ることのない場所を探しました。

 そうして、私は逃げるように、男子校への進学を決めたのです。

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