「廃墟のレストラン」「剣」「請う」その2

剣山けんざんは花器に入れて使うんじゃないですかね。これじゃ水もれないでしょう。あと、私注文してないんですけど」

 真っ赤なチェックのテーブルクロスに巨大な剣山が直置きされ、大量のヒマワリが乱雑に刺さっている。埃と蜘蛛の巣にまみれた店内でここだけが真新しい禍々しさを灯していた。私が座っている椅子も身じろぎのたびに悲鳴をあげる。

「はあ、でもお客さん? 私だってあなたをどうしていいかわかんないんですよ」

 ミニスカートのウェイトレスはベコベコに歪んだ盆を小脇にして首をかしげる。馬鹿らしくなった。やめだ。敬語も客のふりも。

「私は請われてここに来たんだがね、新人さん」

「あっ、じゃああなたが」

「そうとも、今回のパートナーだ。して、その格好とこの花は?」

「ミニスカートは霊障に強いって聞いて。ウェイトレスなのは敬意です。あと、やっぱ鎮魂なら花じゃないですか」

「……どこ情報だよ」

 現場経験ありって言ったのは誰だったか。帰ったらとっちめてやらないとな。私は咳払いをする。

「さて、何から説明したものか」

 除霊稼業も楽じゃない。

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