6.根付・城・火消し(お題をそのまま使う)
それからは怒涛の日々だった。引き継ぎに事務手続き。突然辞めるせいで結婚だの妊娠だのを疑われ、そちらの火消しにも奔走した。噂なんて、頑張って止められるものではないだろうが。
けれど夢からさめたような今、彼らにどう思われるかはどうでもよかった。おそらくは、もう深く交わることもない。
特急に乗って二時間、在来線でさらに三時間。バスに揺られて三十分。目印になる古い城がそびえていた。白壁はくすんで黒い瓦が鈍く光る。小雪のちらつく曇り空の下で、千世から預かった根付を握りしめた。猪の牙から作った細工物だ。これがあれば私の友達だって証明できるから、と言われたけれど、そんなに疑り深いのだろうか。それとも、嘘つきと断じるや特別重い制裁でも食わせるのだろうか。
深呼吸をして、城の裏手の山道へ踏み入る。細いのに、たしかに人のかよう気配があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます