C『風』『猫』『髪』

 彼女はボール紙の小箱を土に埋めている。長いポニーテールが動作のたびにゆらゆら揺れる。なんだって私が立会人なんだろう。見上げれば雲がすごい速さで流れている。嵐の名残が木立をざわめかせる。


 両手で持てる大きさの箱には、タマの死体が入れられている。あまりに安易なネーミングさえ今となっては笑えもしない。たぶん赤い首輪をしているだろうし、茶色い毛皮も健在だろうけれど、タマを生き物たらしめていたなにかはもうここにない。


 泣いてんの、とは聞けない。ただ震える肩を後ろから眺めている。土に埋めればまず箱が、それから肉が溶けていき、最後には骨になるんだろう。骨はずっと残るだろうか。化石にでもなるかもしれない。そのころには私も彼女も死んでいて、だけどかたちはのこらないだろう。人は死んだら灰になるから。きっと土とは区別がつかない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る