「結構降ってるねぇ。積もるかもしれないよ」

 カーテンのかげから君が戻ってきて炬燵にもぐる。わたしは蜜柑をふたつ、無言でこちらとあちらに置く。程よく熟れて大きなものを選ぶのは忘れない。君はそれを素直に受け取って皮に指をさしこむ。艶のある表皮にずぶりと穴があく。

 君の剥いた蜜柑の皮は、いつも綺麗な花形になる。わたしはと言えば、いびつで所々ちぎれてゴミのようである。実際捨ててしまうものなのだけど。

 皮を外された蜜柑は、筋をまとっていても半透明に見える。筋をどれくらい丁寧に取るかで論争する以前に、君は蜜柑の房の皮を食べない。甘夏か何かのようにもっと細かい粒々の中身をあらわにしてしゃぶりつく。ろくに筋も取らずに房をまるごと頬張りながら、君の手つきを眺める。鉱石めいて透き通る粒も、花形の皮の上に積み重なる薄皮も、繊細な指さばきのせいか不思議と絵になる。

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