第446話仮差押え

長い労働裁判が終わりどこか落ち着かない最近です。

「これからお帰りですか?」

「いや前の会社の同僚と久しぶりに飲もうかと言うことになって」

「彼は元気ですか?私はこれから退居立会いの後直帰します。よろしく伝えてください」

彼女も同じ会社で同僚だったのです。

京橋まで40分歩いてそれでも約束の6時半に10分の遅刻です。

居酒屋の奥で昔の相棒が手を上げています。

「新しい職場は少し慣れたのか?」

「それが1か月前に辞めたのですが…」

どこか元気がないようです。

彼はメールで2か月前に労働裁判の嫌がらせの損害賠償裁判で敗訴して控訴したと書いていました。

「仕事が合わなかった?」

「いえ、会社から給料の仮差押えをされたのです。それで今の会社から首に」

私はビールを彼に注ぎます。

「3人が訴えられた時に後の2人と切り離した方がいいと言いっていたのに」

この2人は私が在籍していた時からバックマージンの噂があったのです。

「そうなんです。上司の部長が認めてしまって私もその一部を渡したと。でも貰っていないのです」

共同で裁判をするのは結構危険です。

「それが新しい会社が決まったのに前の会社の社員に付けられて」

「また仮差押えをする気だぞ」

私もこの会社の執拗さには呆れていました。

「一度会社と話をして請負契約にしてもらえば?」

ブラック企業はババを引いたようなものです。

とくにこの会社は経費の損得抜きの嫌がらせをするのでたまりません。

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