第432話新しい一歩

まだ軽い吊りが起こります。

『今裁判所で裁判官と弁護士で交互に打ち合わせをしていますが、相手企業から前回の和解案に対してさらに3百万を上げたいと申し入れがありました』

前回は60歳定年の就業規則を上げ60歳まで不当解雇を認め払うと提案があり、私は今頃60歳定年を出してくるのはとその和解を蹴りました。それについては家に帰って妻と息子に丁寧に説明をしました。

やはり生活が懸かっているのです。

『どういうことですか?』

『裁判官が今更60歳定年は難しいと私側とは反対のことを言ったようですね。それで額を引き上げてきたのです』

『その和解も蹴ってください。最低不当解雇を認めた日まで払うことを伝えてください』

「室長、理事長室に来てほしいとのことですよ」

編集長が声を掛けます。

編集室は今日がここが最後でもう机や書棚や資料のダンボールは運び出されてれています。

部員は私たちを除いて新しい建物で荷物を受けています。

「ようやく理事の態勢が決まったよ」

とコーヒーを勧めてくれます。

「理事は半分入れ替わって、平均年齢が75歳から68歳となった。それで組織も変えようと思うのだ」

と言って試案の組織図を拡げる。

「総務部をピーク時の16名から今回は思い切って5名にしたのですね?総務部長も退任させ若い総務課長にしたのですね?」

この部長は行政からの最後の天下りでこの人のパイプで助成金を取っていたのです。

今は企画で私が助成金の担当です。

「私の企画室は半農半x事業部と編集室とに分けたのですね。5名と6名、一番大きい部ですか?それと総務から賃貸部が分裂して5名」

「ようやく君が提案してくれた賃貸部が黒字事業になった」

賃貸部は行政の物件を中心に扱っています。

とくに本社移転の仲介料が大きいのです。

「4月から赤字事業を開始するぞ」

これは理事長と私が1年温めてきた定年退職事前研修です。

まず行政から助成金付きで公務員を23名受けることになりました。

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