第417話ブラック企業
じめじめした薄暗い廊下を久しぶりに歩きます。
今日はスーツのズボンに白のカッターです。
いつ来ても裁判所は好きになれません。
10時に書記官室の前の長椅子で弁護士と待ち合わせです。
「10時15分から14時までは相手の社員の証人尋問です。こちらは14時から16時まで双方の弁護士の尋問です」
「長いですね」
法廷に入って始めて裁判官と顔を合わせます。
私の2年余りの調書を理解してくれているのでしょうか。
4人の社員が証人として出てきていますが、本当の証人は裁判中に3人が解雇されてます。
「とくに原告とは係わりがないわけですね?」
裁判官が最後にこの言葉を漏らしました。
相手の弁護士の調書と正反対の証言して相手の弁護士が慌てて口を挟んで注意を受けます。
社員はもう私とは係わりがないのです。
本当の当事者の社長は最後まで法廷にも調書も出しませんでした。
「たくさん解雇理由が出ましたが今はどれを解雇理由とされているのですか?」
本人尋問で一言言いたかった言葉でした。
2年のうちに戦う会社は売り上げが半減して会社も新会社に移管され社長も引退逃亡しています。
ブラック企業の見本のようです。
戦いが終わってつい携帯で編集長を呼び出しています。
「少し早いがワインを付き合わないか?」
「では打ち合わせでいつもの店ですか?」
彼女はもう相棒です。
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