第314話無実を証明できない

昨日から着信が何度もあります。

未登録なので部長ではないようです。

朝ドアのボタンが鳴って女房が私を呼びに来ます。

労働裁判をしてから何があるのか分からないので不用意には出ないことにしています。

経理課長が今にも火を点けかねない顔で立っています。

「少し出てくる」

と私は外に出て無言にエレベーターに乗りました。

「このままじゃ財産すべて取られる」

「でもその仕事をあなたは抱え込んでしていたのじゃないですか?このままじゃあ脱税に巻き込まれると注意をしたら、無能な部長だと幹部達を抱き込みましたね?」

「・・・」

「私の労働裁判の調書も酷いものでしたよ。誰もあなたに力を貸そうという気になれませんね。それに立証するのも難しい」

「私は一円も手にしていない!」

「でもあなた一人で会社の金を抜き続けてきた。当然社長の指示も残っていない。現実あなたが金を抜いてそこでその金は消えている」

「社長に都度渡していた」

「でも社長は知らないと言ってるのでしょう?社長はそれでいつも損害賠償裁判を起こしている。それはあなたが一番よく知っているはずです」

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