第303話脱税と裁判

裁判所の近くの喫茶店で前の会社にいた社長の親戚の役員の女性と弁護士に会います。

弁護士とは一度会ったことがありますが、彼女とは初めてです。

総務部長として損害賠償裁判を一時専務から引き継いだ時期があります。

「現在高裁に上がっています。彼女がどうしても会いたいと」

「私は社長の従兄弟になります。裁判の調書は見られたと思いますが?」

この調書は何度も読み返しました。

この時期に同様の幹部社員の裁判が続いていました。

「この裁判の導火線の裁判があるのです」

「そう言う話は初めて知りました」

「初代の専務ご存知でしょう?」

「ええ、親しくして貰っていました」

「あの専務の不正を暴いたのは当時総務部長の今の専務です。私は裁判資料だけしか見ていないのですが、当時社員積み立てが合わない事件が起こりました。これは総務部長が専務に仕掛けた罠だったのです。確かに300万ほど使い込んでいました。ちゃんと証拠が出されています。その時に当時の経理課長が調査したものにその他に支社長2名の不正も見つかったのです」

「総務部長は専務だけを追及したいと思っていましたが、その時反目していた経理課長が騒ぎ出したので結局3件を刑事告発したのです。社長はその気ではなかったようです」

「初めて知りました」

「結果は専務が和解で退職。もう一人の支社長は新たな大口の不正が出てきて刑務所に入りました。社長はそれを旨く使って脱税をしたのでのらりくらり裁判が続いています。たとえばあなたは1200万も役員報酬を貰っていないと反論しているのもそれなのです」

「そんな」

この会社がやたらと裁判が多いのには訳があります。

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