第292話足の引っ張り合い

年末も透析です。

市場は買い物客で賑わっています。

信号の前で立ち止まっていると、見たことのある顔が車の窓からの覗きます。

「経理課長ですか?」

ずいぶん痩せたように思いますが。

彼は車を寄せて止めます。

「連絡をつけようと悩んでいたんだ」

彼も今の総務部長と組んで私の足を引っ張っていた一人です。

「辞められたと聞いていますが?」

「自己都合で退職願を出したんだが、結局受けてもらえなくて私も懲戒解雇になった。組んでいた総務部長が会社の金を使い込んでいたと証言したんだよ。確かに社長からの指示で裏金をこしらえていた」

「刑事告発ですか?」

「いや、民事訴訟された。国税の指摘をこちらになすりつけられたんだ。こちらも弁護士を立ているけど、一人っきりでやっていた仕事なので証明する人も証拠もない」

「だから私が調査した時強烈な反発したんですね?でも裏金にしたお金はどこかに入金していたのでは?」

「いや、現金で毎回社長に渡していた」

「損害額は?」

「11年間で2億6千万。大半が国税の指摘額だ。一度弁護士に会ってください」

当初彼から無能な社員という証言が出されていました。

「しばらく考えさせてください」

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