第259話シャント手術

朝早めに起きてシャント手術に向かいます。

女房が心配してパートの帰りに病院に寄ってくれます。

30分ほど診察室で説明を受けます。

「血液透析の場合は、動脈と静脈をつなぎ合わせて、血液の取り出し口(シャント)をつくる手術をします。部分麻酔をかけるので痛いことはありません。ただ傷口が塞ぐまで入浴は避けてください」

しばらく手術用の衣服を着て待っていると看護婦が手術台に呼びます。

腕の部分だけは自分で見ることができません。

麻酔を打たれてしばらくするとカーテンの向こう側に何人かの影が映ります。

腕に痒いような感触があります。

どれほど時間がたったのか分かりませんが、「いいですよ」の声で体を起こします。

待合室に心配そうな女房の顔があります。

「いよいよ透析生活やねえ」

「先に労働裁判を済ませたかったなあ。この調子では働くのは無理だし」

タクシーに乗ってと言う女房に駅まで歩きたいと告げました。

「いろいろこれからのこと考えてるが・・・」

「まず目の前の透析よ」

「ああ、明日から抜糸まで農業訓練にでるよ」

「焦らずにね」

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