第77話内輪もめ
膀胱がんの抗がん剤治療の影響で極度の血尿が出た貧血から、今は腎性貧血の症状が強くなってきているようです。
めまい 立ちくらみ 手足の冷え 動悸 息切れ 頭痛 足が痛い疲れやすい 顔面蒼白 耳鳴り 注意力が散漫になる状態に襲われています。
今日は珍しく本社から不動産事業部で一番話をした主任が訪ねてきます。
「お元気ですか?」
日焼けした彼が部屋に入ってきます。
「あの頃よりずいぶん楽になりましたよ」
彼にだけは膀胱がんのことを少し話しています。
「これはここだけの話にしてください」
「ここは島流しみたいなところだから心配はいりませんよ」
最近は冗談で下請けの業者とそんな調子で話しています。
「実はうちの部長と専務がついに正面衝突したんですよ。最初は部長が息子と経理課長とお宅の総務課長を抱きこんで優勢で・・・」
もうこういう話はうんざりです。
そう言う意味でここは仕事をしていれば極楽です。
「それで社長が専務にそろそろ引退を考えたらと言い出したのですよ」
「専務は幾つでしたか?」
「65歳になったと。でも今までに何度もそんな話が出ては消え出ては消えだったんです。今までに2度の入院をしていますし」
それは私も同じです。
「それが最後の最後で総務課長が専務側に。それで気の弱い経理課長が降りて」
「総務課長らしい動きですね?」
「どうも専務に次期の総務部長をねだったようなのです。気を付けてください」
私は何とかこのホテル運営を立て直して退職を考え始めています。
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