#104 まーげい
遂に時が来た!
今宵あの場所で 祭り始めようみんなで!
想像以上に盛り上がりに富んだ歌だった。
ボーカルは、コハクチョウさんとブラウンキーウィさん。残りのメンバーは全員ダンサーで、ボーカルの前や後ろを踊りながら移動していく。
人が考えたものなのか、ダンスも非常にキレっキレで揃っていた。それに加え、フレンズ達が色とりどりな容姿をしていることもあり、質素なステージ上でもとても華やかに見える。
何だ、ここまでクオリティが高いのなら、PPPも何も言えないのでは?
心の中のもやもやも 吹き飛ぶほどの大騒ぎ
さあ 一心不乱に 踊れ 朝日のぼるまで
あっはっはっはっはと笑おう
君の笑顔 大好きだよ
…それにしても、平和な歌である。
現代社会とは、まるで真逆だな…。
その現代社会の人間がよくもまぁ、こんな平和な曲を考えたものだ。
と、思っている内に、一曲目が終わった。
ステージ下から見物していた私とアキちゃんは、大きな拍手をする。
「凄かったです…! 綺麗でした!」
アキちゃんは、明るい笑顔でそう言った。
私もお世辞抜きで感動したので、同じように声をかけた。
「完璧だと思うよ、別にPPPを意識なくても良いんじゃない?」
こういう時に、もっと明るく「すっごーい!」と励ましてやりたいのだが、私の性格上、それは不可能らしい。無論、周りとの関わりを遮断するまでは感情表現も上手くできていたのだが。
私なりに精一杯賞賛したつもりだったのだが、メンバー達は首を傾げたままだった。
「いえ、これでもPPPにはまだまだ敵わないわ」
「コウテイさんの素敵な声には追いつきません…」
「イワビーの踊りなんて、もっとアピールが強くてカッコ良いのよ!? それなのに、私は…」
え、えぇー?
これは、単なる自信の無さから来ているローテンションなのだろうか…。
それしか考えられない。何度も感じている事なのだが、いくら私がPPPの事を知らないとはいえ、そこまで比べる必要もないと思う。
こうなったら、私が考えられる方法はただ一つ。
PPPに、彼女達のステージを見てもらうしかないだろう。
そこでPPPのメンバーに、お世辞でも良いから賞賛してもらえれば、彼女達も自信がつくはずだ。
オオフラミンゴさんが次の曲を始めようとメンバーに指示している所を、私は軽く引き止めた。
「じゃあ、次の曲、行くわよ!」
「あっ、ちょっと待って」
「? 何かしら?」
「あの…みんなのステージって、PPPに直接見てもらったことはあるの?」
すると、オオフラミンゴさんは目を丸くした。
「!」
…あ、何か、気に触ること言っちゃったかな…?
そう思ったのだが、どうやらその様子はなく、
「それはないわね…」
と、顔をしかめられただけだった。
「じゃあ、今度見てもらったら?」
私のその一言に、メンバー達は「えっ!」と驚きの声を上げた。そして、ぶんぶんと首を横に振り始める。
「むむむむ無理です! そんな、見てもらうなんて…」
「きっ、きっと、鼻で笑われますよ〜!」
「えぇー…? でも、それで褒めてもらえたら自信になるんじゃない?」
「褒めてもらえる訳がありません! 無理です!」
「無理」って、最初っから断言されてもなぁ…。
やる前から駄目だと言っていては、成功するはずがない。
何故、ここまで弱気なのか…。自信がないにも程がある。
返す言葉を考えていると、突然、聞き慣れない声が背後からした。
「ふっふっふ…。話は全て聞いたわ…!」
「えっ?」
振り返るとそこには、クリーム色の髪と服、そして耳を持ったフレンズが、メガネに指を添えながら立っていた。
「ま、マーゲイ!?」
オオフラミンゴさんが、そのフレンズをそう呼んだ。
マーゲイ? マーゲイ…?
この前聞いたばかりなような…。
すると、そのフレンズは私をびしっと指差した。
「あなたがフーカね! やーっと見つけたわ!」
「え? そ、そうだけど…」
「この前は、かなり大変な目に遭ったのよ。空から落とされるし、そのせいで死にかけるし……。でもまさか、本当にヒトがいたとはね。あなたの噂、アンインでも流しておいたわ!」
「う、噂…?」
「私はマーゲイ。PPPのマネージャーよ! さっきのステージ、見させてもらったわ。すごく素敵だったわね!」
な、何か、すごく強気なフレンズだな…。
ともあれ、鳥以外のフレンズと話すのは、とても新鮮に感じる。この前会ったアライさん達とは、雰囲気も姿もかなり違うが、彼女はネコの仲間だろうか?
…確か、博士がネコ科と言っていた。
「ま、マネージャー!?」
「何でマネージャーがここに…?」
驚くメンバー達の様子に、マーゲイさんは蔓延な笑みを浮かべ、得意げに答えた。
「ライブが楽しみすぎて、早めに滞在することにしたのよ! メンバーの皆もホートクに行きたがってたから…早速明日連れてきて、会場を見て回る予定だわ」
「ぺ、PPPが…」
「来る…?!」
だから、そんなに慌てなくたって…。
「あなた達のステージを、PPPに見てもらいたいのね!?」
強い口調で話しかけるマーゲイさんに、メンバー達は両手を前に出してぶんぶんと振った。
「いえいえいえ、それはフーカさんがそう仰っただけで…」
「私達はそんなこと、一欠片も思ってないわよ!!」
「そ、そうなの? 残念ね…。コラボなんかもやってみたかったんだけど」
「こ、コラボ!?」
「そんなのもってのほかですってー!」
何だか、メンバー達の自信のなさがエスカレートしているような…。
その中で唯一、落ち着いた表情だったオオフラミンゴさんが、口を開いた。
「コラボは止めてほしいわ。それと、私たちのステージも見てもらわなくて結構よ」
冷たく突き放すような発言に、マーゲイさんは瞬いた。
「…はい?」
「私達は、PPPに追いつくために頑張っているの。ハクチョウの言う通り、コラボなんてもってのほかよ」
だ、だいぶ冷たいな…。
これってもしかして、マーゲイさんを怒らせるパターンじゃ…?
恐る恐るマーゲイさんの顔を伺うと、マーゲイさんは怒った様子は見せず、俯いたまま何かを考えているようだった。
「………」
「…どうしたの?」
私が声をかけると、マーゲイさんは顔を上げないまま、
「プリンセスさんが、何か言ってたのよね…」
と、答えた。
「?」
プリンセスさん、というのは…
PPPの一員だろうか?
マーゲイさんは、そのままうーんと唸っている。
「確か…オオフラミンゴ先生がどうたらこうたらって…」
「…え?」
メンバー達の視線が、一斉にオオフラミンゴさんに集まった。
オオフラミンゴさんは、落ち着いた表情を崩さない。
「フラミンゴ、PPPと何かあったの?」
「先生って何…?」
「うーん、でも、これ以上は思い出せないわ…。」
マーゲイさんは、まだ考え込んでいる。
これは……
また、面倒な事が起きる予感がする。
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