#97  まねーじゃー

 私はマーゲイ。

 

 パーク1のアイドルユニット・PPPのマネージャーよ。

 

 昨日は、アンインでライブがあったの。

 会場は大盛況! みんなに楽しんでもらえて、メンバーも満足していたわ。

 まぁ、ライブを一番楽しんだのは、間違いなく私だけどね。ステージ裏を鼻血で汚してしまったのは、申し訳なかったけど。

 

 昨日の疲れが残っているだろうから、今日はオフにしたわ。みんな、思い思いに休んでくれてると良いわね。

 

 え? 私はって?

 マネージャーである私には、休みなどありません!

 

 次のライブ会場をどこにすべきかとか、良い練習場所はないかとか、色々と嗅ぎ回るの。

 昨日のライブでファンの子から聞いた情報では、今度ホートクでフェスティバルがあるらしいわ。

 フェスティバルなんて、面白そうじゃない!!

 PPPも、ぜひ参加させてほしいわ!!

 

 …と、いう訳で、ホートクにやって来ているのだけど…。

 

 どこに行っても山、山、山!!

 

 険しい道は疲れるし、飛んでいるフレンズに声をかけても、聞こえてないみたいだし。

 久々に来たけど、ホートクってこんなにハードなチホーだったかしら…。

 鳥のフレンズにとっては、楽チンなのかもしれないけど…。

 私はネコ科よ!!

 ただでさえ、アンインからボートをこいできたんだから疲れてるのよ!!

 

 フェスティバルの会場はどこなの!?

 

 失敗したわ…。もっと情報を集めてから来れば良かった…。

 こんなの、マネージャー失格……!!

 

 

 …と、思っていたら!!

 

 

 やったわ!! 第1村人(?)発見!!

 初めて地面を歩いてるフレンズに会えたわ!!

 

「あ、あの!!」

 

「ん?」

 

 そのフレンズは、茶色いショートカットの髪型で、青いズボンを履いていたわ。

 男勝りな感じで、カッコいい! 可愛いPPPとは違った良さがあるわね。

 それに、大きな翼にも惹かれるわ…!

 

 …なんて、評価してる場合じゃない!!

 フェスティバルの情報を集めなきゃ!!

 

「私はマーゲイ、PPPのマネージャーよ。この辺りでフェスティバルをやるって聞いて来てみたんだけど、主催者は誰かしら?」

 

 まずは、主催者に参加の交渉をしなければならないわね!

 PPPが参加するって言ったら、きっと飛び上がって喜んでくれるはずよ。

 

「マネージャー!? PPPのか!?」

「そうよ!」

「PPPがフェスティバルに来るのか!?」

「いや、まだ決まってはいないわ。だから、主催者に許可をもらいたいの!」

「へー、すごいな!! きっとフーカも喜ぶぜ!」

「…フーカ?」

 聞いたことないフレンズね。

「フーカっていうフレンズが、主催者なのかしら?」

 

 すると、そのフレンズはさりげなく爆弾発言をしてきたわ。


 

「いや、フーカはヒトだぜ?」

 


 

「……はいっ?」


 

 

 ヒト…?

 ヒトが、パークにいるの…?

 

 

「あーでも、ちょっと待てよ? 主催はハカセだったっけなぁ? うーん…」

「ヒトがここにいるの!?」

「え? あぁ」

「何で!? どうして!?」

「どうしてって、それはオレもよく知らないけどさ…。フーカは良い奴だぜ!」

「そ、そのヒトは今、どこにいるの!?」

「え? それはオレにも分からないな…」

 

 ヒトがいる、ということは…!!

 私に分からない機材の使い方や、アイドルの隠語を、教えてもらえるかもしれないじゃない!!

 

 そんなチャンス、滅多にないわ!!

 ヒトはもう、いないと思ってたのに…。

 

 

 ますます燃えてきたわ!!

 

 

「お願い! そのヒトを探して!!」

「え、えぇー…?」

「今すぐ会いたいの! お願いよ!」

「そう言われても、どこにいるか分かんないしなぁ…」

「おねがい!」

「うーん…そうだなぁ…。とりあえず、仲間に聞いてみるか」

「仲間?」

「この先に、スカイダイビングにぴったりのスポットがあるんだ。今日はそこで練習するんだ!」

 

 

 

「すかい? だいびんぐ……??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃぁぁぁぁぁああああぁぁっ!!!!!?」

 

 ちょっ、高い高い高い!!!

 私を殺す気なの!?

 ていうか、スカイダイビングって何なのよ!?

 

「こんな高い所まで連れてきて、何するつもり!? 私、木より高い所は苦手なのよ!」

 

「だから、スカイダイビングだって!」

 

「だからスカイダイビングって何よ!?」

 

「やってみればすぐ分かるわよ。大丈夫、一瞬で終わるし、落ちる前にちゃ〜んと助けてあげるから」

 

「でも、ネコ科のフレンズさんで気絶しなかった方はいらっしゃいませんでしたよ…?」

 

「いや、マーゲイは大丈夫だよな!」

 

「!? 今、何か不吉なこと言わなかった!?」

 

「いやだから、ネコ科の奴はみんな気絶するけど、マーゲイは大丈夫だよなって!」

 

「…………」

 

 イヌワシさん、ルペラさん、ゴマバラワシさん…

 癖のある3人組に出逢ってしまったわ…。

 あの時、イヌワシさんに話しかけなければ良かった…。

 

「…と、とにかく、今すぐ下ろしなさい! 私には仕事がたくさんあるのよ!!」

 

 

「ん? 今、下ろせって言ったよな?」


 

「えっ───」

 

 

 わたしの体は一瞬ふわりと浮かぶと、そのまま下に…

 

 

 

 落ちた。

 

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!?」

 

 

 

 …あぁ、短い人生だったわ…。

 一生PPPについていこうと思ってたのに…!

 

 

 プリンセスさん、コウテイさん、ジェーンさん、イワビーさん、フルルさん……

 

 

 お元気で……。

 

 

 

 

 

 私の意識は、そこで途切れた。

 

 

 

 

 

 ──────

 ────

 ──

 

 

 

 

 

「やっぱり気絶しちゃったじゃないですかー…」

「マーゲイ、何か強そうだから大丈夫だと思ったんだけどなぁ…?」

「強そうって、何を基準にしてそう仰っているのですか…?」

「サーバルなんかは、落ちる前に気絶してたからな! それに比べたら強かったと思うぜ」

「まあ、その内目を覚ますわよ。良い悲鳴が聞けたから、私は満足よ」

「貴様の目的はそれだけだろ…」

 

 あの3人組の声が聞こえる。

 

 ……あれ?

 私、生きてる…!!?

 

 光が見えたから起き上がってみたら、3人組がビックリした様子で私を見ていたわ。

「わっ?! ビックリしたぁ…」

「…い、生きてる……!!」

「そりゃ、生きてるだろ」

「殺した覚えはないわよ?」

「皆さん、何でそんなに素っ気ないんですか…?」

「生きてる…! 良かったあー!!」

「と、突然どうした…?」

「これでまた、PPPの姿が見れるのね! 生きてるって幸せー!! ウッハァー!」

「……何というか、熱狂的な方ですね…」

「…オレとはいる世界が違うみたいだな…」

「スカイダイビングしたら、フーカの所まで連れてってくれるって約束でしょ!? お願いしても良いわよね?!」

「あ、あぁ、そうだったな……とりあえず、広場に行ってみるか」

 

 

 3人組は、フェスティバルを開催する予定の会場まで、私を連れて行ってくれたわ。

 ステージを正面に、椅子やテントが並ぶ広場…!

 

 これこそ、ライブをやるべき環境よ!!

 

 くーっ、燃えるわーっ!!

 

 

「あ、フーカいた」

「えっ!? どこどこ!?」

 イヌワシさんが指さす方を見てみると、そこにいたのは…

 

 間違いない! ヒトよ!!

 

 …ん?

 あのヒト、どこかで見たことがあるような…?

 ガイドさんか何かだったかしら?

 でも、かなりあたふたしてるわね…。

 

 まぁ良いわ。とにかく、交渉よ!!

 

「マーゲイ? どうしたのです?」

 

「わっ!? は、ハカセ!?」

 

 ビックリしたぁ…脅かさないでちょうだいよ…。

 ハカセにはライブの機材の使い方をよく教えてもらってたけど、いつもこうやって突然話しかけてくるのよね…。

 

「何故ここにいるのですか?」

「ここでフェスティバルをやるって聞いたから、視察に来たのよ。PPPもぜひ参加させてほしいから、主催者であるフーカにそれを頼みたいんだけど…」

「あぁ、なるほど…まさかPPPが来てくれるとは」

「何か不満があるかしら?」

「…いえ、大歓迎なのです。客も増えて、大盛り上がりになると思います。私としてはとても嬉しいです」

「博士にそう言ってもらえると嬉しいわ! それじゃあ、フーカに交渉を…」

「あ、今は駄目なのです」

「? どうしてよ?」

「フーカは、別の参加者と話し合いをしている最中なのです。彼女には私から伝えておきます。フーカはPPPの存在を知りませんし」

「えっ? フーカって、ガイドか何かじゃなかったかしら?」

「…それと彼女は別人です。かなり似ていますが」

「あら、そうなの…。じゃあ、よろしく伝えてほしいわ! 私には次の仕事があるから。フェスティバルの日が近くなったら、みんなでホートクに向かうわね」

「分かりました」


 

 良かったぁー!

 ひとまず、交渉成立ね!!

 

 これで楽しみが増えたわ…。うふふ…!

 

 フーカのことがすごく気になったけど、また今度話せるわよね。

 とりあえず、今日はおいとまして……


 …あっ。

 

「……その…誰か、私をボートまで連れてってくれないかしら?」

 

 

「えー…?」

 

 イヌワシさんが、がっくりと肩を落とした。

「また連れてくのかよ…?」

 

「悪かったわね、空が飛べなくて! でも、夢の翼はあるわよ! そーらはー、とーべーないーけどー♪ ゆーめのー、つーばーさがーあるー♪ うふふふ…!」

 

「……………。」

 

 何よ、その得体の知れない物を見るような目は!

 突然歌い出したって良いじゃない!!

 

「…ボートで来たのなら、私がそこまで連れていってやるのです」

 

「ハカセ! ありがとうー!!」

 

 

 次のライブは、ホートクで決定ね!!

 

 今から楽しみだわ…!

 うふ、うふふふふー!!

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