#78  にっき

2049年 1月1日

 

 今日は記念すべき1日らしい。ヒトにとって1年の最初の日である今日は、めでたいことなのかうれしいことなのか分からないが、ジャパリパークにはいつもより多くの客がやってきた。そして口々に「おめでとう」「よろしく」という。そこかしこでイベントが行われ、ステージ上ではヘビのフレンズが多く見られた。どうやら、今年は「ヘビの年」らしい。しかし、私・ヘビクイワシは一切イベントに呼ばれなかった。名前にヘビが入っているのに…。

 

 

 

………………

 

 

 

2049年 1月3日

 

 友人のトキイロコンドルが、「えんげき」というものの物語をかいたらしい。正式には「きゃくほん」というらしいが、私にはよく分からない。あまりにすすめてくるのでためしに見てみたが、なかなか面白かった。

 彼女曰く、この物語をヒトがパークでえんじるらしい。その時は私も見に行こう。とても楽しみだ。

 

 

 

………………

 

 

 

2049年 1月9日

 

 突然、トキイロコンドルが訪ねてきた。

 彼女がかいた「きゃくほん」はヒトがえんじる予定だったのだが、どうやら彼女はフレンズだけでえんぎを現実にしたいらしい。

 しかし、私にできることがあるのだろうか? そうきくと、トキイロコンドルは私に「かんとく」をやってみないかいってきた。かんとく……よく分からないが、何となく名前のひびきが良かったので、私はとりあえずこのさそいにのることにした。

 

 

 

………………

 

 

 

2049年 2月20日

 

 今日は最高な1日だった。

 トキイロコンドルが書いた脚本を、フレンズだけで演じた。結果は大成功。今までの練習の成果が実った。

 アスカにはとても褒められたし、たくさんの客からジャパリまんやらグッズやらをもらった。

 このメンバーで演劇ができて、本当に良かった。楽しかった。

 いや、私たちはまだまだ演劇を続ける。

 トキイロコンドルは、新たに脚本を書くと言っていた。

 私たちの活躍は、始まったばかりだ。

 夕方、私は夕日をバックに脚本家と誓い合った。

 これからも、最高の演劇を作ろう。

 見たヒトも、フレンズも、皆が幸せになれる演劇を。

 トキイロコンドルは、私にとって最高の相棒だ。

 

 


………………

 

 

 

2049年 2月25日

 

 パークにヒトがいなくなってから、2日が経った。

 何故ヒトは、私たちを置いてパークを出たのだろうか。

 パークを危機に追い込んだ奴はスザクによって封印されたというが、それが本当なのかは分からない。

 アスカはまだ、船に乗っているだろう。私たちとの別れを相当惜しんでいるに違いない。別れる時にあれだけ泣いていたのだ。

 ヒトの賑わいが無くなったことで、パークはしんと静まり返った。ステージの上でマイクを握るヒトも、パーク内を巡視する車を運転するヒトも、客をガイドしているヒトも、今はいない。

 あの光景が、まるで夢だったかのようだ。

 アスカはきっと帰ってくる。私はそう信じているが、フレンズ達はかなりネガティブ思考だった。

 トキイロコンドルは、もう脚本を書かないと言い出した。客が見てくれないのならやる意味がないと言っている。確かにそうかもしれないが、アスカはきっと帰ってくるはずだ。

 

 

 

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2049年 2月26日

 

 トキイロコンドルと口論になった。このまま本当に演劇を続けるか、続けないか。続けたとしても、果たして何かが生まれるのか。

 しばらく言い合った後、続けることに決めた。役者もみんな、まだやりたいと言っている。

 解散の危機は去ったが、トキイロコンドルとの仲が曖昧なものになってしまった。本当はいつものように話したいのだが、私も思うように優しく接することができない。どうすれば上手く話せるのだろうか? アスカがいれば、今すぐ相談しに行けるのだが…。

 かつての信頼を取り戻せるきっかけを、何としてでも作りたい。

 

 

 

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2049年 3月7日

 

 今日は記念すべき日である。パークにヒトがやってきた。いや、帰ってきた。

 名前はフーカ。アスカそっくりのヒトだ。もしかしたら、アスカが別人の振りをして戻ってきてくれたのかもしれない。私はそう信じたい。いや、きっとそうだと信じている。

 そして、ここホートクで、フェスティバルを開くことを検討しているらしい。それに私たち演劇グループも、参加することにした。

 何がともあれ、このグループに活発さを取り戻すためには、私は全力で監督を努めようと思う。

 新しいメンバーも入ったことだし、また1からのスタートになる良いきっかけになった。これを1つの節目にして、これからはこのメンバーで、演劇をしよう。

 私はまだ、相棒を信じている。私と彼女であれば、どんな客にも幸せを与えられるはずだ。

 例えフーカが、アスカでなかったとしても…。

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