#24 うたとだんす
「どうかしら? 私の踊り!」
くるっと身をひるがえしてから、そのフレンズは私にキメ顔で問いかけた。
「うん、良いと思うよ」
少し口角を上げて控えめに答えたが、そのフレンズは満足したようで、「なら良かったわ!」と嬉しそうに言った。
オオフウチョウ、と言っただろうか。そこら中に飾り羽(?)がついていて、かなり派手なフレンズだ。彼女曰く、踊ることが生き甲斐らしい。
きっと、元の鳥も華麗なダンスをするのだろう。厳密に言えば、それは求愛行動の一環なのだろうが…。
スカイレース組の次は、ダンスと歌が好きなフレンズ達のグループが紹介された。元々は合唱部門とダンス部門に分かれて人間から教わっていたらしいが、現在は意気投合して共にミニライブを開催しているらしい。
メンバーは、さっき踊りを見せてくれたオオフウチョウさんと、大人しく見えるが歌うのは大好きらしいブラウンキーウィさん、そしてアイドルになるのが夢のコハクチョウさん、踊りも歌も好きで気品のあるオオフラミンゴさん、オオフラミンゴさんと仲が良く音響などを頼まれているコシベニペリカンさんの5人だった。
「彼女たちも様々なイベントを開催していますが、客は来ないしメンバーは増えないし、進展はほとんどないのです。フーカ、これから色々教えてやるのですよ」
また博士が図々しい発言をする。
「ハカセ、ひどいですっ! 私達は頑張っているんですからっ!」
コハクチョウさんが必死に反論した。どのグループも頑張っているとは主張するものの、どこまで形になっているのか分からない。
そして、それらの面倒見を全て私に任せるのもやめてほしいのだが…。
「そ、それで、あの……誰かグループに入ってくれる方、いたりしませんか…?」
ブラウンキーウィさんが焦りと不安を募らせた表情で、群衆に向かって問いかけた。
フレンズ達はざわざわと話し出すが、先程のダーウィンフィンチさんのように元気良く手を挙げる者はいないようだ。
しばらく待っていると、二人組がフレンズ達を掻き分けて前に出てきた。
赤い前髪に黒いマフラーを巻いた、似た者同士の二人だ。
「あの、私達、少し興味があるんですけど…」
「いや、私はちょっとだけというか…」
二人ともかなり大人しそうだが、何のフレンズなのだろうか?
「あら、タンチョウとマナヅルって、歌とかダンスってやってたかしら?」
オオフラミンゴさんが二人に問いかける。
どうやらこの二人は、タンチョウとマナヅルのフレンズらしい。この二種の鳥なら日本では有名だし、私も知っている。タンチョウは家族間でダンスを踊ると聞いたことがあるし、マナヅルは、九州の方に大群で渡ってくる鳥だった気がする。
「はい、私はこう見えても、ダンスが結構好きなんです。今まで披露をするつもりはありませんでしたが、この前コシベニペリカンさんに誘われたので、ぜひご一緒させて頂こうかと…」
「えっ、いつの間に!?」
オオフラミンゴさんが、驚いた様子でコシベニペリカンさんを見た。コシベニペリカンさんはにっこり笑って、
「ふふっ。タンチョウさんはセンスがありそうだったので、つい誘っちゃいました」
と言った。
その瞬間、メンバー達の表情がぱあっと明るくなり、
「さすがコシベニペリカンね!」
「もちろん大歓迎よ!」
「よ、よろしくお願いします…!」
「これから楽しみですっ!」
二人組を囲んで思い思いに喜び始めた。
上手く行くのか心配なのは変わらないが、とりあえず明るい雰囲気の中で練習ができそうだ。
鳥と言うからには歌が好きなフレンズがもっといても良いと思ったのだが、そんなことはないのだろうか…?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます