#23  すかいれーす

「次はスカイレース組ですね。ハクトウワシ、スカイダイバーズのメンバーの紹介を頼むのです」

 

「オーケー! 任せなさい!」

 

 私が知っている三人組とは別の三人組の方を向いて、ハクトウワシさんは元気よく返事をした。

 

「この三人組は、前のレースで準優勝したスカイダイバーズっていうチームよ! 私たちの一番のライバルと言えるメンバーね。ちなみにスカイダイビングって分かるかしら?」

 

 もちろん知っている。芸能人がヘリコプターから飛び降りてワーッ! って叫ぶあれだろう。小さい頃はよくバラエティ番組を見ていたので、スカイダイビングやらバンジージャンプやらの光景は目に焼き付いている。

 

 知ってるよ、と答えようとしたのだが、茶髪でショートヘアーのフレンズに遮られてしまった。

 

「ちょっと待った! それはオレ達が説明するぜ!」

 

 やんちゃな男の子のように見えるが、立派な翼に茶色い軍服と、なかなか強そうな子である。彼女がスカイダイバーズのリーダーだろうか?

 

「あ、オレはイヌワシって言うんだ。よろしくな! スカイダイビングってのは、その名の通り空からダイブするわけで…」

 

「ちょっと待ってください。スカイダイビングについては後で説明しましょう。今は時間がないから、まずは自己紹介を優先した方が良いのでは?」

 

 イヌワシさんを落ち着かせたのは、赤と黄色の前髪にロングヘアーに、オレンジ色の服を着たフレンズだった。おしとやかで礼儀の正しそうな子だ。

 

「私はグアダルーペカラカラと言います。普段はルペラと呼ばれているので、フーカさんもそう呼んでくださいね。そしてもう一人の彼女が…」

 

「ゴマバラワシよ。よろしくね。」

 

 ルペラさんに紹介されて不適に笑ったのは、白髪に黒い斑点模様の付いたフレンズだった。私と目を合わせてニヤニヤしている。何を考えているのか分からなくて、非常に怖いのだが…。

 

「で、このオレ達三人がスカイダイバーズだ! よろしくな!」

 

 個性的な三人組の紹介が終わったところで、博士が口を出した。

 

「ところで、今回レースに出場するのはこの二チームだけなのですか?」

 

 確かにそうだ。たったの二チームでは準優勝までしか順位が出ないし、何よりも盛り上がりに欠けるだろう。

 人間がいた時のレースでは、どのように運営をしたのだろうか?

 

 すると、ハクトウワシさんが「ノープログレムよ!」とはっきり答えた。

 

「レースの出場者は後で募集するわ。まずは、それぞれ自分がやりたいことを皆にはやってほしいの。それと掛け持ちしてレースに出てもらっても良いでしょ? きっと、出たい子もたくさんいるでしょうしね!」

 

 その言葉に、フレンズ達は仲の良い者同士で出るか出ないか議論を始めた。ノリ気の子もいれば、速く飛ぶことが苦手で出たくない子もいるようだ。


 そのざわめきの中から、元気の良い声と共にひょっこりと手を上げたフレンズがいた。

 

「はいはーい! ダーとヒクイドリは前と同じでコースの警備をやるよー!」

 

 見ると、群衆の中から、虹色の髪を持ったフレンズが青い髪に赤いマフラーをつけたフレンズの腕を引きながら出てきた。

 

「ね、良いでしょ?」

 

「ちょっと待て、私は良いなんて一言も…」

 

 青い髪のフレンズは、虹色の髪のフレンズに捕まれた腕をさすりながら、気まずそうに私を見た。

 

「ヒクイドリだ。よろしく…」

 

 ヒクイドリといえば、鳥界で最強と言われている動物だろう。キックされて死んだ人間がいると聞いたことがあるが、彼女もかなり強いのだろうか?

 

 ヒクイドリさんが軽く頭を下げると、虹色の髪のフレンズも元気良く挨拶した。

 

「ダーはダーウィンフィンチだよー! よろしくねー!」


 二人の自己紹介に、私も、よろしくと頭を下げた。

 

 ダーウィンフィンチは、生物の資料集に出てきた記憶がある。同じ種の鳥が、地域によって異なった形の嘴を持っていることで有名な鳥だ。当時の私はこの資料に少し興味を持ったが、調べるまでには至らなかった。

 姿形は十人十色、という意味で髪が虹色なのだろうか?

 

 この二人組はかなりの凸凹コンビに見えるが、仲は悪くなさそうだ。ヒクイドリさんがダーウィンフィンチさんに気を遣って付き合っているだけなのかもしれないが。

 

「あのね、ヒクイドリはすーっごく強いんだよ! おっきいセルリアンとかも一発でやっつけちゃうんだから! だから、前のレースの時はコースの警備をしてたんだ!」

 

 なるほど。やはりヒクイドリさんは強いらしい。

 だが、たまに出てくるセルリアン、という物は一体何なのだろうか? 聞いた限りでは、フレンズの天敵らしいことは確かだ。

 

「あの、セルリアンって…?」

 

 ダーウィンフィンチさんに聞いてみると、代わりに博士がこたえてくれた。

 

「セルリアンについては後で詳しく説明するのです。まぁ、我々の捕食者、とでも言っておきましょう。元々二人にはコースの警備に当たってもらいたかったのです。そうですよね、ハクトウワシ?」

 

「その通りよ! 二人とも、よろしく頼むわ!」

 

 スカイレースの運営メンバーは、とりあえずこの八人に決まったようだ。

 

 日がだんだん上に上がってきたので、次のグループの紹介に移ろう。

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