#22  えんげき

「ではまず、一番人数の多いこのグループからですね。このフレンズ達は、かなり前に他のチホーで行われたフェスティバルに参加した影響で、当時やった演劇をまだやっているのです。当時はヒトが監督したこともあり、中々の出来でしたが、現在はメチャクチャの劇なのです」


 博士の言いたい放題な紹介に、私は苦笑いせざるを得なかった。

 やはり、メンバー達はむっとしたようで、

 

「ちょっと待ってください。ハカセ、それは言い過ぎでありましょう。私達は、あの時の演技をまた再現するために頑張っているのですよ?」

 

グループの先頭に立っていた赤いメガネのフレンズが、頭についた黒い飾り羽(?)を揺らしながら博士に近づき、抗議した。

 

 博士はそのフレンズを指差し、紹介する。

 

「こちらがグループのリーダーで、監督のヘビクイワシなのです。ヘビクイワシ、メンバーの紹介を任せるですよ」

 

 ヘビクイワシと呼ばれたフレンズは、小さな溜め息をついてから、

 

「ハカセの言うとおり、私が監督のヘビクイワシでございましょう。あの時の賑わいを取り戻すならば、喜んで協力差し上げます」

 

 と、自己紹介をし、メガネのブリッジをくいっと上げた。

 

 とても真面目で厳しそうなフレンズだ。見ごたえのある演劇を作っていそうだが、博士の言うメチャクチャとは、一体どこがメチャクチャなのだろうか?

 

「では、メンバーの紹介をします。彼女が脚本を書いているトキイロコンドルでありましょう。便りになるかは分かりませんが、ストーリー構成は全て彼女に任せています」

 

 ヘビクイワシさんの背後にいた、こちらも赤いメガネをかけたフレンズが、律儀に頭を下げた。

 

「トキイロコンドルだ。よろしく。」

 

 オレンジと黒、ベージュが入った髪が、とても鮮やかだ。実際の鳥もとても綺麗な羽を持っているのだろう。

 

「そして彼女が、小道具担当のメンフクロウでありましょう。私達は、彼女が作ったお面を使ってヒーロー物の劇を演じています。とても便りになるフレンズです」

 

「よろしくね。お面ならいつでも作れるから、欲しいときは声をかけてくれ。」

 

 メンフクロウって、あの細い目でアホ面の…?

 おっと危ない、口に出すところだった。

 サンドスターには、動物を人間の姿にするだけでなく、美人にする役割もあるのだろうか?

 目の前にいるメンフクロウ(?)さんは、とても豪華な服を着ていて、大人っぽい雰囲気をかもし出している。

 

 ヒーロー物の劇、と聞いたが、どんなストーリーを展開しているのだろうか? 何ちゃかレンジャーと悪役が戦うアクション、というのがヒーロー物の醍醐味だが。

 

「では、残りの役者を紹介します。まず、メンバーの中で一番元気のある彼女が、主役のオウギワシでありましょう」

 

「オウギワシだぜ。よろしくな!」

 

 ショートヘアーで男子っぽい、とても元気の良いフレンズだ。確かに、この子ならアクションに向いていそうだ。

 

 次に紹介されたのは、日本の国鳥・キジである。

 

「キジだよー! よろしくねー!」

 

 彼女も明るく気さくなフレンズのようだ。きびたんごをあげたら、喜んでついてきてくれそうな気がする。

 

 夏と冬で羽色が急激に変わると教科書で見たことのある、ライチョウもメンバーの一員だった。

 

「よろしくお願いします! 仲良くしてください!」

 

  ここまでは元気のあるフレンズだったが、残りの二人はとても大人しく静かな雰囲気で、とてもヒーロー物には似合わなそうなフレンズだった。

 

 一人目は、全体的に黒っぽい服を着た、コクチョウというフレンズである。

 

「彼女も役者として活動しています。普段は大人しいですが、練習になるととても良い演技をするので、期待しても良いでありましょう」

 

「そ、そんな、期待なんて…。あ、よろしくお願いします!」

 

 そして二人目、かつ最後に紹介されたのが、博士と似た容姿をしているフレンズだった。フクロウの仲間だろうか?

 

「キュウシュウフクロウです。キューティって呼んでください。よろしくお願いします…」

 

 やはりフクロウだった。名前に九州が入っているということは、もともと日本に生息している種類なのだろう。

 演劇メンバーの中で一番無愛想な上に、どごかをうつろに見つめる目つきからは、何を考えているのかさっぱり分からない。謎多きフレンズだ。

 

 他のメンバーはもちろんだが、この二人がステージでどんな演技をするのか楽しみだ。本当なら今すぐここで演技してほしいのだが、そんな暇はない。

 

 さあ、次のフレンズ紹介に耳を傾けよう。

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