機械×機械

私のバイト先のレジのリーダーをしている社員さんは、同僚の間から「機械」と呼ばれ、融通が利かないということでとても煙たがられています。因みに30代独身女性。

例えば、あるお客さんがリーダーに何かお願いをしていて、リーダーがそのためにどこかへ行こうとしていた途中に、別のお客さんが質問をしようとしたものなら、


「申し訳ありません、ただいま別のお客様からご用命を承っておりますので」


と、噛まずにマニュアル通りのお断りを入れる。

台詞を読んでるのかというような接客です。


そんなリーダーと、「アンドロイド」とも評される私が二人でレジを打っている時は、ほぼ無駄がない機械同士のやりとりみたいになります。リーダーは時間刻みで命令をしてくるのでパターンさえつかめばどうということはないのですが、融通が利かないので私が裏で他の社員さんの愚痴を聞くことになったり調停役を担う事があったりと気をもむことが少し増えます。


「エッフさん、腰などは痛めていないですか?」


「はい、以前は痛めていましたが今は楽になっています」


「それはよかったです。足元にヒーターとかがあればいいのですけどね。足元が冷えます」


「そうですね。体は全体が連動していますものね」


「そうそう。私も腰を支える筋肉をつけるように最近言われまして」


「それは医者に言われたんですか?」


「そうです。立ち仕事ですからね。筋肉をつけないといけないです」


まるでSiriと喋ってるみたいなリーダーとの会話の一例。

私とリーダーのコンビは、ある意味安心感があります。なかなかいないタイプの人間なので面白いです。リーダーも「これは天職」と周りに言っているそうで、よかったなと思っています。なお、あまりに融通が利かないため客からのクレームが結構きてるとのことです。そこはわたくし、爆笑しております。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る