エッフ、キレる

バイト先で噂になった「いつも静かなエッフ君の怒り」。

この前、バイト先で夜間にいるパートのお爺さんを一撃で葬った話。


夜間のパートのお爺さん、私が入った頃はできていた仕事が年齢もあってかだんだん遅くなり、できなくなり、できない仕事を大本営(店長)は夜間のアルバイトにさせるようになったのです。まあ、そこまで負担になる程でもない(負担の感じ方には個人差があります)ので色々ありつつもまあいいかって思っていたのですが、よろしくないのはお爺さんの方で、「やってもらうことは当たり前」という態度が全開。やたらと、怒り飛ばすような態度で我々に接するようになって、ちゃんとやれや!みたいな発言が目立つようになってきちゃった。


ところがバイト衆最年長の私は、どちらかというと穏健派で、血の気の多い高校生バイトたちをなだめるシーンもしばしばという感じでした。どっちかというと調停役。ところがある日、その私が、高校生バイト衆の中でも比較的穏健な子と一緒にお爺さんの仕事(冷蔵コーナーにはない野菜を冷蔵庫に片付ける)を代わりにやって、やり終えた頃に事件は起こった。やり終えて、さあどうしようかと考えている私たちにお爺さん近づいてくる。


お爺

「商品の前出しして」


高校生

「やりましたよそっち」


ここで、お爺さん、怒る。

因みに前だしとは、商品が売れて穴が空いた部分の商品を前に出して、棚の見栄えを綺麗にするというやつです。高校生の子が、野菜とかの前に少しやっていました。


お爺

「できとらん、きてみい」


俺と高校生がついていく。棚を指差して、「ここ」「ここも」と、できていない部分を指摘。まあ、実際できていなかったので、仕方ないかとは思う。言い方が悪いけど。ところがお爺さんの怒りは続く。


お爺

「飲料はとにかくよく出るから何回でもやって

それと、そこのコーヒーの底上げをやっといて」


今まであなたがやるべき野菜の片付けをやっていた、やってもらっていた人たちに言うセリフにしては態度が大きい。と思いながら、黙っている俺(頭には血が上っている)。俺が黙々とコーヒーの段ボールをあけて、コーヒーを並べようとすると、気を遣ったのか高校生の子が手伝おうと手を貸してくれる。すると


お爺

「それは1人でもできる!」


と、結構でかい声で怒るお爺さん。

困惑している俺と高校生、たじろぐ。それを見てお爺さん畳み掛ける。


お爺

「そこに2人もおったら邪魔になるじゃろうが、1人でできるんだからそれは」


会話八陣の計、「攻撃の陣」出陣の法螺貝が脳内に鳴り響く俺。

出陣していく脳内に集められた「正論の槍」を持った言葉の戦士たち。


「そんなに1人でできるというなら、自分でやればいいじゃないですか?

私たちは今まで野菜やってたんですからね?」


一撃で粉砕。お爺、黙る。接客でも滅多に出さない声でお爺さんを一喝した俺、高校生を連れて別の場所へ移動し、別の場所で仕事を始めたのでした。お爺さんは返す言葉もなく無言でその仕事を1人でやってました。ちょっとしたスカ◯とジャパンみたいな展開。高校生たちの間では、噂になってたみたいです。いつも、ボロクソ言われてたみたいだからね。


ちなみに、他のパートさんや正社員の方も、そのお爺さんの横暴には手を焼いてるみたいで、僕が反抗したことは「別にいいんじゃないか」ということで上の人たちに取り沙汰されることはありませんでした。むしろ、「静かなエッフ君がキレたらしいという事に驚いた」という人もいたほど…。まったく、やれやれだぜ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る