第39話 迫り来るケモ耳幼女

 俺達の朝は、ランニングから始まる。


 俺とユミーリアとコルットは、三人並んで走っていた。


 隣でゆれるユミーリアの大きな2つの果実が実に素晴らしい。


 そしてそれより素晴らしいのは、ゆれる3つのテール、トリプルテールだ。


 ポニーテールがゆれるのにときめき、ツインテールがゆれるのにもときめく。

 トリプルテールなら、それが一度に味わえる。


 まさに奇跡の髪型だ。ゆれる3つのテールを見ているだけで、幸せになれる。



 反対に、隣で走るコルットには気をつけないといけない。


 なにせコルットの身長は俺の腰くらいというガチ幼女だ。ピコピコ動くケモ耳が可愛い、ケモ耳幼女だ。


 まあ、このコルット、俺より強いんだけどな。

 小さな身体に大きな力を持った、スーパーケモ耳幼女だ。



 俺達はランニングを終えると、マイルームでシャワーを浴びる。


 ユミーリアとコルットが先にシャワーを浴びているが、俺はのぞいたりはしない。

 ランラン丸が後ろでニヤニヤ見ているんだ。のぞきになんていけるか。


 いや、ランラン丸がいなくても、のぞいたりしないけどな。俺は紳士なんだ。


 ……こうして自分に言い聞かせるのは何度目かはわからないが。



 そうしてシャワーからユミーリア達が出てきた後、俺もシャワーを浴びる。


 女の子の匂いがするとか、全然思ったりはしない。



「さて、それじゃあ今日は遺跡調査依頼を受けるぞ」


 シャワーを浴びて一息ついた俺達は、ミーティングを始める。


 みんなはソファに座って、俺は近くに椅子を持ってきて座っている。



 俺達は現在、Dランク冒険者だ。

 Cランクに上がる為には、3つの依頼を受けないといけない。


 護衛依頼、遺跡調査依頼、フレアイーグルの討伐の3つだ。


 その内の1つ、護衛依頼は先日クリアした。

 残るは2つだ。


 そして今日受けようとしているのは、遺跡調査依頼。

 この街の近くにある、コダイノ遺跡という遺跡を調査するという依頼だ。


「普通は遺跡をグルッと一周すれば終わりという依頼だ。もちろんモンスターは出るがそこまで危険じゃない」


 俺の説明を聞いて、ユミーリアが手をあげる。


「はいリクト! リクトが見れる、勇者の未来だと、何が起きるの?」


 俺はゲームのストーリーを知っている。その事をみんなには、勇者の未来が見れると説明してある。


「うん、勇者が遺跡調査に行くと、そこには邪神の使徒がいるんだ」

「また邪神の使徒なんだ」


 ここ最近、というか事件が起きる時は必ず邪神の使徒が絡んでいる。

 ユミーリアがまたかというのも無理はない。


「まあ、青色の覆面の邪神の使徒だから、そんなに強くはないんだけどな」


 ゲームとしては、色んな所で邪神の使徒が暗躍してますよーと見せる為のイベントだ。


 問題は、本来のストーリー通りにならなかった場合だ。


 俺のせいかはわからないが、どうもイレギュラーな事ばかり起きている気がする。


 最初のゴブリン討伐では、本来存在しないゴブリンクイーンが出てきたり、盗賊のアジトではライオルオーガなんてバケモノが出てきたり、護衛依頼ではまたまたゴブリンクイーンが出てきたり……


 なんだかまた、知らないモンスターが出てくる気がする。


 とはいえ、俺達もマイルームの重力修行によってパワーアップしている。


「俺が見たのは、あくまで勇者の未来というあいまいなものだ。何が起きるかわからない。油断せずいこう」


 俺の言葉にみんながうなずく。


 俺達は準備をして、ギルドに向かった。



「おはようございます、リクトさん」


 ラブルンことラブ姉が笑顔で俺達を迎えてくれる。


 この笑顔とはじける2つの果実があるから、今日もがんばろうと思える。


「今日は遺跡調査依頼を受けようと思うんだけど」


 俺はラブ姉にそう言って、遺跡調査依頼を受ける。


「そういえば、ユウはもう遺跡調査依頼、終わってるんだよな?」


 ユウ、男勇者だ。

 確か先日、遺跡調査を終わらせたと聞いている。


「はい。今はフレアイーグル討伐の為に、レベルを上げていると聞いています」


「ユウが遺跡調査に行った時、何があったか聞いてます?」


 本来のストーリー通り、邪神の使徒と出会ったのか、俺は気になっていた。


「いえ、特に何もなかったそうです」


 マジか。

 どうも男勇者の方が、本来のストーリーからズレていっている気がする。


 何も起きない方に。


 護衛依頼では盗賊のアジトをスルーしたし、今回は邪神の使徒とのエンカウントがなかったという。


 その分、俺達にしわ寄せがくるんじゃないだろうか。


 カンベンしてくれよ、働け勇者。



 俺達は遺跡調査依頼を受けて、ギルドを出た。


 俺の知っている通り、コダイノ遺跡に行って、グルッと一周まわって、異常がないか見てくるだけの依頼だ。



 コダイノ遺跡はキョテンの街の東にある。


 モンスターが出るので一般人の立ち入りは禁止されている。


 とは言っても、見張りも誰もいないんだけどな。自己責任ってやつだ。


「よし、サクッとまわって終わらせよう」


 ここは盗賊のアジトと違って、必ず邪神の使徒を倒す必要は無い。


 本来のストーリーでは、邪神の使徒はここで邪神の復活の為に必要な何かを探していたという話だった。そして勇者達が来る頃には、すでにその何かは回収済みなのだ。倒しても倒さなくても意味が無い状態だった。


 つまりだ、放っておいても影響は無い。その何かというのも、その後ストーリで触れられない、重要じゃなさそうなものだったしな。


 俺達は遺跡の中に入る。


 しばらく遺跡の中を歩いて、見てまわった。



「……ねえ、リクト」


 ユミーリアが俺に話しかけてきた。


 ユミーリアの言いたい事は、俺にはなんとなくわかった。

 というか俺も、もう少ししたら、ユミーリアに話しかけようと思っていたのだ。


「モンスターが、全然いないね」


 そう、この遺跡にはモンスターがいるはずだ。


 なのにまったくエンカウントしない。


 モンスターの気配どころか、なんの気配も感じない。


「コルット、何か感じるか?」

「ううん、罠どころか、生き物の気配も何も感じないよ」


 コルットはモモフ族といって、罠の察知や周囲の気配を感じる事に優れている種族だ。


 そのコルットが何も感じないという事は、本当にこの遺跡には、何もないのだろう。


 どういう事だ?


 これはこれで異常だ。


「サクっと終わらせて帰って、ラブ姉に報告した方がいいな」


 そう言って俺達は遺跡をまわった。



 遺跡を一周グルッとまわって、そろそろ遺跡を出ようとした時に、それは起こった。


 突然、遺跡全体がゆれた。



「な、なんだ!?」


 俺達は集まって、身構える。


「きゃあああ!!」


 遺跡が大きく傾き、ユミーリアがひとり、遺跡の外に放り出される。


「ゆ、ユミーリア!」


 残された俺とコルットだったが、激しくゆれる遺跡の中で転げまわっていた。


 単純な縦や横のゆれではない。


 まるで遺跡をグルグルとまわされている様な、メチャクチャなゆれ方だった。


 俺とコルットは開いていた穴に落とされた。


 落ちている間にも、遺跡自体はゆれていた。



 やがて底の方につくと、ゆれがおさまった。


「な、なんだったんだ? 大丈夫か、コルット」

「うん、わたしはへいきだよ」


 俺達が落ちてきた空間には、何もなかった。


 ふと上を見上げると、落ちてきたはずの穴が無い。


「おいおい、もしかして、閉じ込められたのか? 俺達」


 先程のゆれ、そして今の状況。


 もしかしなくても、俺達は罠にはめられたのかもしれない。


 俺達が居る場所は、そんなに広くはない。

 見渡す限り、何も無い。


「コルット、何かないかな? スイッチを押すと出口が出てくるとか」

「うーん、特になにもなさそうだよ」


 コルットもこの空間……部屋を見てまわるが、何もなさそうだった。



 やはり、閉じ込められたのかもしれない。


 というかなんだよこの展開。

 これこそ間違いなく、本来のストーリーにはなかったぞ。


 大体なんだ、遺跡全体がゆれるって。


 この遺跡は特にストーリーに深くかかわる事はなかったはずだ。

 Cランク昇格試験で一度おとずれて、後はレベル上げの為にモンスターを倒しにきたりするくらいだった。


 俺は不安になる。


 不安になったが、コルットの前でそんな態度は見せられない。


 コルットの前では、あくまで頼りになるおにーちゃんでいたい。


 そう思うと、いくらか冷静になってくる。


「コルット、とにかく落ち着いて考えよう。きっと脱出する方法はあるはずだ」

「うん、そうだよね……がんばろう、おにーちゃん!」


 コルットも不安そうにしていたが、俺の言葉を聞くと元気が出たみたいだ。


 俺はコルットの頭を撫でて、もう一度この部屋を調べてみる。


 しばらくそうして調べてみたが、何もないので、俺達は座って休憩する事にした。


「参ったな、本当に何もなさそうだ」

「うん、どうしよう」


 いっそ壁を破壊してみるか?


 だが、今俺達が遺跡のどこにいるかわからない以上、ヘタに壁を壊して、何が出てくるか、どこに出るかもわからない状態でそれはできるだけ避けたい、最後の手段だった。


 とはいえ、それしかないとなると、いざとなれば……



「ねえ、おにーちゃん」


 俺がそんな風に考えていると、コルットが俺に話しかけてきた。


「どうした、コルット?」


 コルットが不安そうにこちらを見ていた。


「さっきからちょっと気になってるんだけど、この部屋、空気がうすくなってきてない?」


 ……なん、だと?


 そう言われると、心なしか息苦しい気もする。


 そうか、通気口も何もない部屋だ。酸素が減ってきてもおかしくない。


 マズイ。モタモタしている場合じゃないなこれは。


 こうなったら、コルットに壁を壊してもらって……



「おにーちゃん」


 突然、コルットが俺の考えをさえぎった。


「な、なんだ?」


 なぜかコルットが、俺にせまってきていた。


「おにーちゃん、わたしのくうき、あげるね」


 そう言って、コルットが俺の顔に近づいてきて、その唇を……



「ってちょっと待て! どうしたんだコルット、急にそんな事を言い出すなんて!?」


 あきらかに様子がおかしいコルットを、俺は無理矢理引き剥がした。


「えっと、こういう時はこうして口と口をくっつけるって、お母さんの部屋にあった本に書いてあったの」

「何の本だよ!?」


 コルットのお母さんって事は、恋愛小説か何かだろうか?

 コルットのお母さん、もうちょっと娘の行動には気をつけてくれよ。


「それで、確かこうして服を脱いで……」


 ……オイオイオイオイ! それはダメだっていうか、ほんとに何の本なんだよ!?


「おにーちゃん、わたしのくうき、あげるね」


 そう言って、もう一度俺にせまってくるケモ耳幼女ことコルット。


 座っている俺の上に乗っかってきて、服を脱ぎながら、可愛い顔がせまってくる。



 オレハロリコンジャナイ

 オレハロリコンジャナイ

 コルットハケモミミヨウジョダカラ、人間ノロリジャナイカラ大丈夫。

 オレハロリコンジャナイ

 オレハロリコンジャナイ

 コルットカワイイヨ コルットハオレノヨメ

 オレハロリコンジャナイ

 オレハロリコンジャナイ



 俺は突然の事に、混乱していた。



 誰も見ていないこの空間で


 俺は最大の敵である、俺の理性と戦っていた。




 そうしている間にも、ケモ耳幼女の唇が、目の前にせまってきていた。



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