落とし物
ああおかしいなー、ああ、どこかに落としたかなあ。スマートフォン。ないなーどこかなー。ううん、ええとさっきは床屋に行ってたからなー。床屋さんに電話かけてみようかなあ。
トゥルルルルルー
「はい、バーバラバラバラです。」
ああ、落ち着いた声。ダンディーなマスターの声だ。
「あのお、さっきお世話になったものなんですけれど。スマートフォン落ちてませんか?」
「あ、はいい。ええと、ちょっと見当たりませんねえ。ないなあないなあ。ええと、そうですねぇ見当たりませんねえ。うーん。申し訳ないのですが見つかりませんねえ。ところで、現在は何から電話をかけてらっしゃるのですか?」
ムカッ!!
「公衆電話だ!!公衆電話だあああ!!」
「ひっ!!ひいぃぃいいい!!申し訳ございませんでしたーっ!!」
ガチャッ
電話が切れる。20円返ってくる。孤独な箱の中。チャリンチャリン。チャンリンチャリン。
公衆電話から出て、街へ向かう。キラキラとネオンライトが蝶のようだ。ああ、私のiPhoneはどこだろう。一体どこに落としてしまったのだろう。賑やかな人混みをとぼとぼ歩く。交番がある。ああ、落とし物の基本だ。交番で尋ねると言うのは。
ガラガラー
「はい、どうしましたか?」
イケメンの若い警官が目を見て尋ねてきた。
「はい。あのiPhoneをなくしてしまいましてね。」
「それは大変だあ!!探してきまーす。」
そういうと警官は外に走り去って行った。そして、二度と戻ってくることはなかった。
完
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