人参

「はい、君はこのカツラをかぶってねー。」


 ハロウィンパーティーで女装をするのだ。ああ煩わしい煩わしい。なんでそんなことをこの俺が、俺はかぼちゃになりたかったのだ。女にはなりたくない。かぼちゃになりたい、かぼちゃになりたい。


「俺はかぼちゃになりたい。」


 俺は言った。


「俺は女になりたくはない。かぼちゃになりたい。」


「だめだ。かぼちゃじゃだめだ。なぜならかぼちゃの仮装をするのはたかしくんだともうすでに決まっているからだ。」


「かぼちゃが二つあったっていいだろう。別に。かぼちゃが二つあったって。」


「だめだ。やるならせめてにんじんだ。人参をやるのだ。」


「わかりました。やってみます....。」


 ゴゴゴゴゴ....ゴゴゴゴゴ.....


 渋々私は人参をやりました。顔をオレンジ色に塗り、細長いオレンジ色の衣装を着て、人参をやりました。


 ゴゴゴゴゴ...ゴゴゴゴゴ....


「人参だよ。人参だよ。」


 私は奇怪な動きをしながら踊ります。


「人参だよ。人参だよ。人参だよ。人参だよ。」


「ハロウィンに人参なんておかしい!!」


 ダダーンッ!!


 先生の雷が落ちました。


「ハロウィンに、ハロウィンに人参なんておかしいーーーっ!!」


 ダダーンッ!!ダダーンッ!!


(やばい。めっちゃ怒っている。なんてことだ。めっちゃ怒っている。)


「君ぃっ!!どういうことだー!!どうして人参なんてやっているのだーっ!!」


 うっ、うぅっ、怖い..怖い...。


「ええと、村上くんが言いました。人参ならいいよって。言いました。」


 私は村上くんのせいにしました。先生は村上くんの方へ行きました。


「村上ぃっ!!なんで人参なんかーッ!!」


「ハロウィンにだって、にんじんはあるんだーーッ!!」


 ウガーーーーーッ!!


 村上はすごい声で叫びました。


 ウガーーーーーッ!!


 完


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る