ワカメ

 人はみな、仮面を被って生きている。そしてそれは、人だけではない。ワカメもそう。ワカメはワ仮面をつけている。


 ワカメたかしは悩んでいた。友達のワカメと話すとき、いつも偽りの笑顔を示してしまう。本当の自分を出せない。疲れてしまう。まるで自我がないみたいだ。


 カウンセラーのワカメわか子に相談した。


「ワ仮面が煩わしい。どうすれば良いですか。ありのままに生きたいです。」


 声はげっそりとしているのに、笑っている。偽りの笑顔だ。 


「それならば、取ってしまいましょう。ワ仮面なんて、脱いでしまいましょう。」


 ワカメわか子は優しく言った。


「ええ!!そんなことできるのですか!!」


 どうやらワカメたかしには衝撃の事実だったようだ。


「はい。出来ますよ。ふるい落とすのです。体を思いっきり震わせるのです。ブオオオオオオオオオオオオオオオオォォォオオオン!!」


 ワカメわか子は洗濯機みたいに体を振動させ始めた。ワカメには手がないため、体を振動させふるい落とすしかないのだ。


「ほら、たかしさんも、ブオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォオオオオン!!」


「は、はいい!!ブオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォオオオオン!!」


「ブオオオオォォォォォオオオオオオオオオオオオン!!」


「ブオオオオォォォォォオオオオオオオオオオオオオオン!!」


 バグゥッ!!


 魚と間違えられ、サメに食べられてしまった。

 完

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