幕間

幕間




 私は今日、守るべき国を失った。





 七月十七日。帝国は本当の意味で滅んだ。ツァーリがレーニン率いるボリシェヴィキの手で末期をむかえたのだ。


 私達の愛すべき帝国は滅び、臨時政府という皇位の簒奪者さんだつしゃがその位置についた。




 なぜこうなった? 私達が戦争に負けたからか? 日露戦争、露土戦争。私達は大敗を期した。




 国内に溜まる、不平、不満。私達はその罵詈雑言を受ける理由があった。困窮していく民の生活。私達がそれを受ける事で民が納得してくれるのなら、甘んじて受けよう――そう思えた。


 帝国を愛していたから。


 だけど、帝国は滅んだ。得体の知れぬ何かが、この国のあった場所の上に立っている。

 未だ名もない別の何か。赤く悍ましき別の何か。



 私はこんな国の為に戦いたくなどない。私が命と剣を捧げたのは帝国でありツァーリなのだ。断じてこのような得体の知れぬ国ではない。




 日露戦争。


 全てはここから始まった。全てはここから狂い出した。


 ならば、正さねばなるまい。歪んだこの世界を滅しなければならない。この命に代えてでも。


 私は将軍であったが兵士だ。戦士なのだ。戦わねばなるまい。帝国を取り戻さんがために。

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