幕間

幕間

「――ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」


 この言葉を唱えると脳みそが泡立つ感覚がして酷く心地が良かった。頭を切り開いて脳みそに直接モルヒネを突っ込んでるみたい。ふわふわとした眠気のような、酩酊状態に飲まれているみたいな、そんな感じ。


「――ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」


「ぜうべあくごあぎわしたえずゅにうき」


 男が何か、いっている。この不思議な呪文を教えてくれた男。でも……あれ? こいつ誰だっけ?


「――ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」


「やひゆさなびぎるきうどくにけにてちき,たはじみどひあちすきちにうき」


 ニヤニヤ、ニヤニヤ、下卑た笑み。ああ、そんなこともうどうでも良い。


「――ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」


「らうだ.たあにかわきにかみおやをちすひうなかすう」


 この、今は名前も思い出せない男の、この笑みが以前までは苦手だったのがナツカシイ。


「――ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」


「たり.さろんけろとゆやえ,すいごぬてきえなうう」


 からり。男が何かを放ってきた。真っ赤な何かの欠片。それに込められた魔力に全身がざわついた。


 ――


 これさえあれば、と口の端がぬらりと歪む。


「“やけすわけはこやは”はえわさぢ,うぞあみどはかみおにりびしをろやすにきてちぢわえぎ.うみひはなきりとぎどれまなますうぢわえ」


 喜色の帯びながらも壮大に男は語りかける。祝福するみたいに、あるいは呪うみたいに。






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