第9話 第七幕 火の民の役目
火野将兵は風間真知子とともに星の智慧派
に所属しナイ神父から直接指示を受けて活動
している。それが、火の民としての自らの役
目に沿うものだと考えているからだ。
星の智慧派に所属している特権を利用し、
教団が保有している稀覯書を閲覧することに
よってクトゥグアの封印を解く方法を見つけ
る、それが火野将兵が考え、火の民の長老た
ちを説得し星の智慧派に属した理由だった。
実際には、なかなかその機会は訪れなかっ
た。ナイ神父の指示は対象の監視なども多く、
外に出ることが多かったのだ。更にはほとん
ど同行している風間真知子の存在も問題だっ
た。彼女は風の民の末裔であり、本来火の民
とは敵対している訳ではないが完全なる共闘
をしている訳でもない。特に彼女は自らの出
自とは関係なく生きたいと考えているようで
火野の動向にも関心は無いように見えた。
なんとか機会を設けて火野が星の智慧派の
蔵書を確認していたとき、不意にナイ神父が
現れた。神父はドアから入ってくることがな
い。何か空間が黒く靄ってきたと思うと、そ
こに神父が建っているのだ。
「ここで何をしている。」
「はい。お察しの通り、我が主の封印を解く
方法を探しております。」
「うむ、正直でよい。お前は元々そのために
我が教団に入ってきたのだし、我もそれを許
しているからそこ勧誘したのだからな。それ
で何か見つかったのか?」
「いえ、特にこれといったものは。プロヴィ
デンスの教団図書館あたりに行かせていただ
ければ多少は有意義かも知れませんが。」
「そうだな、極東支部の蔵書あたりでは無理
もない。いっそのことセラエノでも行ってく
るか?」
「セラエノですか?僕が行ってもいいのです
か?」
「彼の地には行ってはいけない者など居ない
はずだ。まあ、彼の地に行ける者が少ないだ
ろうがな。今も地球人の何某が向うに滞在し
ているのだから、お前が行っても問題はない
だろう。」
「マーク=シュリュズベリィとマリア=ディ
レーシアの二人ですね。彼らは当然神父を封
印をする方法や旧支配者の復活を阻止する方
法を求めているのでは?神父はなぜそれをお
許しになっておられるのですか?」
「それはお前も知っての通り旧支配者の封印
が解かれる寸前で失敗することが必要だから
な。人間にも小出しに情報を与える必要があ
る。お前にも役に立ってもらわなければなら
ないことだしな。」
「僕は失敗する気はありませんが。」
「まあ、それでも良い。クトゥグアのみが封
印を解かれたところで影響は少ないのだから
な。」
「それは、どういった意味ですか?」
「そんなことまでお前に教える気はない。お前
はただ淡々と自らの主の封印を解く方法を模索
するがよい。そして、自らの運命を呪うがよい
わ。」
そういい捨てるとナイ神父はまた消えてしま
った。
「自らの運命を呪う?」
口に出しで言うと、寒気がした火野だった。
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