第103話 シヤルスク銃砲

ロハスの店を後にした八尾達は、シヤルスク銃砲へと向かった。


「おはようございます」


「やぁよく来たね、今日は何だい?ぁあ、そうか登録だっけ

じゃあさ、銃を見せてくれる?」


八尾はスリングで背負った銃を肩から下ろした。


「うーん、良く手入れされますね。

そうそう、住所と名前は?え?お嬢ちゃんも?へぇこりゃ驚いた

えー、だってそうだろ?お嬢ちゃんみたいな可愛い子がねぇ

うんうんいいねぇ。

え?3人登録するの?火薬買うだけなら1人で大丈夫だよ?

あぁ念のため?ハイハイじゃ申請書3人前、はいお待ち」


「ありがとうっ。で、お代はいかほどっ?」


「うちは申請書はお金貰ってないよ、その代わり火薬はなるべくうちで買ってね

じゃこれ持って役所に出せば直ぐ登録して貰えるからね」


と、急いで役場に行くと、1人5銀で登録出来た。


「登録して来たわよっ」


銃砲店に戻るとアンは勢い良くドアを開けた。

店主は缶入りの火薬3個を用意して待っていた。


「おっ登録出来た?じゃちょっと見せて?

ほら、犯罪とかに使われたら困っちゃうじゃん?

だから売った時はこの登録番号を控えて置くんだ

全く最近はお上が煩くてね」


「はい、じゃ1つ小金貨ね。

そうそう、町の外に射撃場出来たの知ってる?

東門出て歩いて20分ぐらいだよ」


「へぇっ、面白そうねっ、今から行きましょうっ」


「なに?行く?じゃあ割引券あげる。うんうんいいのいいの

あ、そうそうそうそう、サンプルの的紙もあげる。

じゃ頑張ってね」


・・・


「まさか銃砲店に射撃場まであるとはなぁ」

「びっくりねっ」

「でも、たけるさんが始めた時も同じだったのでは無いデスか?」


確かに八尾が始めた時も、調べるまで全く気がつかなかったが、近所に銃砲店があり、射撃場も多かった。

競技用エアライフルの射撃場は市の体育館に有った程だ。


東門前の屋台でおやつを買い、門で一時的に外に出ると告げた。

「あぁ、ハンター試験の練習かい?間に合うと思うけどよ、門が閉まってても一時外出だったら、脇から声かけりゃ中にはいれっからよ、頑張んな」


東門をくぐると田園風景であった。

畦道を歩くとカエルが飛んで田んぼへと逃げて行く。


森が見えたと思ったら、シヤルスク東射撃場と看板が出ている。


受付と思われる小屋に入ると、奥からお婆さんがよろよろとした足取りで出て来た。


「はいよ、いらっしゃい。おまいさん方、見学かい?撃つのかい?」


「シヤルスク銃砲で聞いて来たのよっ 撃ちたいんだけど大丈夫かしらっ?」


「ってこたぁ鉄砲の方かい?、若いのに珍しいのう

1人2銀で的紙一枚サービスじゃ。その割引券で半額じゃ」


「では3人お願いいたします。」


「今は誰も居らんがな、的紙を交換するときは全員に声掛けて、銃に弾が入ってないよう注意するんじゃぞ」


・・・


射場に出てみると、何やら採石場の跡のようである。

誰も居ないので、そのまま射台から25メートルの所に的を立てた。


そして火薬の缶を開けて銃に付属していたカップで計り、銃口から流し込む。

丸く切られたボロ布のパッチを銃口に乗せて上から弾を押し込む。

銃身の下に取り付けられているカルカと呼ばれる突き棒で弾を奥まで突いていく。

アンの銃は、銃身にライフリングが刻まれているため、押し込むのが大変そうである。


火蓋を開けて口薬を上から注ぐと発射準備完了である。


射台には机と小さな椅子が置いてある。

砂が入った袋まで有ったので、ありがたく使わせて貰う事にした。


「この袋の上に置くのっ?」


べるでの作った頭巾を被ったアンが射台での撃ち方について訊いて来る。

なかなか様になっている。


シュ、バーン


「ん?中ったと思うんだけどっ?弾の痕が見えないわねっ?

はずしたかしらっ?」


八尾は目を細めで的を見る。


「んー真ん中?」


「たけるっ、410も使っていいっ?」


と410番のレバーアクションで撃ち始めるが、多少散らばるようだ。


「むぅ、精度は種ちゃんの方が良いわねえっ・・・

はい、射撃中止っ 的を遠くに置いて来るわっ

たけるっ100メートルまで行ったら合図してっ」


八尾はエアライフルで使ってた距離計を出して、ボタンを押して100メートルの位置に見当を付ける。

アンがそこにたどり着くと手を降った。


100メートルは遠いな・・・

アンは戻って5発ほど的に撃ち込んだ。

その後、フウフウ言って紙を取って戻ってきた。


100メートルで拳大である。オープンのアイアンサイトということを考えると相当中っている。


「100メートルで5センチ位落ちるのねっ」


八尾とべるでは25メートルで何とか合格するレベルになった


「楽しかったわ、また来るわねっ」


お婆さんに挨拶して、射撃場を後にした。


「やぁお帰り。射撃場どうだった?楽しめた?」


「なかなかだったわっ。あれで的が動いたらもっと練習になるわねっ」


「ほう、お嬢ちゃん、なかなか面白い発想するね。

今度提案してみるよ」


・・・


「自分がアイデア漏らすのは良いんだ?」


「悪かったわよっ、もうっしつこいわねっ」


「オネェサマ、逆ギレは恥ずかしいデスよ?」


銃砲店を出た所で珍しく責められるアンであった。

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