第9話 熊ステーキ
木の枝にロープを掛ける。
目いっぱいの高さに輪っかを作り、ストレージからちょっとだけ熊を出して、口に輪を掛けてから全体を出す。
なかなか難しい。慣れるまで何回か落とした。
なんせ相手は120キロだ、下手に落とすと潰されてしまう。
で、やっと吊るしたと思ったら、流石に足は地面についてしまっている。
まぁ仕方ない。
猪と同じように皮を剥ぐ。熊なので毛皮を有効に使いたい。
ちょっと脂を犠牲にしながら皮を破かないように気を付けて剥いでいく。
足の方から剥いで腰まで剥いた。
そこで足先を間接から外す。もも肉は外れる寸前にストレージを開いて中に落とした。
毛皮を細引きを使って枝に巻き上げていく。
背中のぶ厚い脂の中からコロっと弾頭が落ちた。
背中側から撃っていたら致命傷にならないかもしれない・・・
背ロース?背筋?を削いで仕舞う。腕を外して、肋骨を外そうと思ったら固い。
丁寧に骨を内側から抜くことにした。背骨にはおそらく心臓を貫いたと思われる弾が砕け散った跡があった。
骨は意外と細かく割れる。まるで瀬戸物を割ったようだ。
手を切らないように注意深くナイフを進める。
そして肉をあらかた取ったあと、枝からおろして頭も皮を剥く。
熊の牙は太くて鋭い。
こんなのに噛まれたらと思うとぞっとする。
剥いだ皮を熊の敷き革とか遊んだら内側が枯葉だらけになって後悔した。
「部屋リスト」からfan5のクッカーセットを取り出して、大鍋に水を少し入れて火にかける。
こいつは一通りの鍋がそろってるし、小さい鍋は炊飯用で使い勝手が良い。
皮に付いた油を削ぎながら順次投入していく。
溶けだしたら少し火から離してじっくりと火を通していくと、脂身はだんだんと透明になり脂と粕が分離していく。
順次カスは取り出していく。
そして火からおろして放置しておくと熊脂の完成だ。皮の脂身も結構取れた。
皮は岩塩をまぶしてビニール袋に入れたのち、ストレージに突っ込んだ。
結局夕暮れになってしまった。
熊脂なんて夜なべ仕事でやればよかった。
さて、今日は塩コショウもあるからステーキ焼くぞ。
大バラシにした肉の中から背ロースを取り出すと3センチ位の厚みで切る。
ゴリゴリの背脂を切り取ってLodgeのフライパンに投入する
円高になったときにBBQが流行ったんで、個人輸入したんだよね。
結局1~2回使ってお蔵入りしたけど・・・
背脂が溶けて白い煙が上がってきたころ合いで肉を投入する。
ジュパーパパパパパっ いい匂いだ 1~2分でひっくり返す。
流派が色々あるようだが、今回は岩塩とコショウを後掛けにする。
上からパラパラっと掛ける。そのあと火から離して蓋をする。
その間にコッヘルで沸かしたお湯をマジックライスに入れてファスナーを締めて振る。
もちろん、お湯を入れる前にスプーンと脱酸素剤を出すのを忘れてはいけない。
お湯でも水でも作れるので非常食として備蓄していたのだ。
もちろんアウトドアで定期的に消費して入れ替えている。
値が張るのでアウトドアじゃ普通に米を炊いていたが、目を離していても大丈夫と言う利点はでかい。
待つこと10分位、ナイフで肉を切って様子を見る。
中心がばっちりピンク色のミディアム 良い焼き加減だ。
ジビエには寄生虫やウイルス、捌いているときに付いた細菌が居る場合がある。
中には駆除出来ずに死に至る怖いものもある。
低温調理も流行りだが、中心の温度が60度付近になれば良いという話ではなく、ある程度の時間を保つことが必要である。
冷めないうちに喰らう。ちょっと時間をおいて肉汁を馴染ませるって話もあるが、我慢は出来ない。
表面から香ばしい肉の香、ひと噛みすると肉の旨みが溢れる。
遅れて鼻の奥をくすぐる木の実の風味。脂の甘み。
熟成どころか新鮮すぎる肉だが、旨みは強い。
飲み込むと目が冴える位に旨い、いや食べる喜びを感じる。
流石に筋は固いがモーラナイフで小さくカットしていく。
噛みしめるとジュワっと旨みが出る。
野生の肉なので、当たり外れと言うものがある。
雌雄、年令、食べていたもの、捕り方、捕った後の処理方法。
味の差は色々なところから出てくる。
ジビエは旨いって言う人やジビエが固くて臭いって言う人が居るのも、
釣った魚と同じ事だ。釣った後、炎天下のバケツで死んだ魚は不味い。
夏にカニ喰ってるブダイとハバノリ喰ってる冬のブダイは味が違う。
と、先にステーキを喰いきってしまった。
マジックライスをフライパンに入れて脂に絡ませる。
そして火にかけて炒める。
旨い 脂の風味とコメの味。しみじみと旨い。
ホンのちょっとだけ醤油が有ったら言うこと無いんだが。
でもコメが腹に入ると胃が落ち着く。つくづく日本人である。
ふと視線を感じた。
ポチがじ~っとこちらを見ている。
お、忘れてた つか未だ居たのか 森に戻るかとおもいきや懐かれちゃったなぁ。
取り分けておいた筋と脂を茹でてさましてからやる。
フライパンを片付ける。汚れものも取り出しなおすと元の状態に戻るから大変便利である。
ビバチート。
夜も更けたので寝る。寝る・・あれ?眠れん?
なんか妙に興奮状態だ。ツェルトを捲って外に出てみる。
なんかポチの目もギラギラしている?耳もピンと立ってる。
なんだ?なんか来るのか?
第六感に目覚めたか?
銃を取り出して何時でも使える状態にしておく。
が、何も起きない。
結局何も起こらないまま、またツェルトに包まって寝る
なんだろう、このギラギラ感は・・・熊肉かなぁ・・・
マジックライスが魔法の米になった・・・訳じゃないだろうなぁ・・・
ひょっとしてアドレナリン?か?
そういえば某国で叩きまくって殺した肉は旨いとか言う話があったなぁ。
う~ん確かに熊も興奮してたからなぁ・・・
こんな感じなのかな・・・・
明日もう一度喰って様子を見よう・・・
それと明日はまたシェルターを作らないといい加減ツェルトだけは辛いなぁ・・・
そうそう、それと熊脂、仕舞い忘れてたけど大丈夫かなぁ・・・
思い出して仕舞いに行く。たき火に薪をくべる・・・
パチパチと燃え盛る炎を見ながら色々考える・・・・
気が付くと夜が白んできてしまってた。
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