ダルーダ連合国
一方、ダルーダ連合国の国家元首、フェンライ=ロウこと、別名『豚侯爵』(アシュ限定の呼び名)はとある政策会議に出席していた。『太陽宰相』と謳われる彼も、独断で政治的な意見を通すことはできない。この国は合議制を採用し、全ての事柄が会議によって決定される。
なので、一日に10回以上の会議もザラだ。退屈な政策の会議では、かなりの睡魔に襲われるので。腕に香辛料を仕込んでいるくらいである。
と言っても、すでに意見は調整済みであり、あとは予定調和の世界が拡がっている。たまに、若い大臣が粋って『こうあるべきだ』とわめきちらすが、そんな彼らの意見が通ることなど、まずない。
そんな会議が一段落し、巨漢の彼はノッソノッソと歩を進める。両脇には女性の執事が2人。明らかに容姿で人選したのであろうことが、ミエミエなほどの美女っぷりであった。
「今日も阿呆な王族がいたな?」
「……ゴサノールド王子が果敢に発言していらっしゃいましたね」
「はぁ……まったく。ヤツは会議の前提条件を勘違いしている」
フェンライは、大きくため息をついた。歴史的にダルーダ連合国は、多くの小国家が集まって形成された。必然的に、小国の若き王族などが代表で出席するケースも多く、そうなると突飛な発言などが出たりする。
彼が認識する会議とは、まとまった意見を確認し合う場である。そもそも、互いの文化や価値観が異なるにも関わらず、青臭いあるべき論などほざけば、必然的に淘汰される。互いの利害をすりあわせて、一致させることこそ本質である。
それを勘違いして、会議をなにかアイデアを出す場だとか、意見を戦わせる場だとか思っていると痛い目に遭う。どうでもいい案件、もしくはかなりの権力者がいる場合を除けば、その意見が通る可能性などまずない。
「あいつらは所詮、努力が足りないのだよ。自分の意見を通したいのなら、当然根回しなどするだろう?」
「はい。その通りです」
「まあ、勝手にやっていればいいのだが。どうせ、もう決まっていることだ」
すでにファンライは多数を抑えた。後は、そういう特異な世間知らずたちが意見を戦わせればいい。そんなことより、目下はあの性格最悪魔法使いの動向。すでに、ギュスター共和国は手中に収めたという噂は聞いている。
しかし、それにも関わらずフェンライの様子は平静そのものだった。今や太陽宰相と呼ばれるまでに至った自分と。なんの権力も後ろ盾もない一介の闇魔法使い。誰がどう考えたって、勝つのは前者に決まっている。
よくよく考えれば、火を見るよりも明らか、必然であった。
すでに指名手配を完了して、ヤツを駆逐するのみ。捕まえたら、一生四本足で這いつくばって歩かせて、豚のように家畜の餌を与え、豚小屋にいれ、飼育してやると、フェンライは心に決めた。
「なあ?」
「はい」
「プライドが死ぬほど高くて、性格が最悪最低な、鼻持ちならない男が豚のように這い回る光景を見たくないか?」
「フフフ……それは、凄く楽しそうですわね」
「そうだろう? グフッ……グフフフフフッ、グフフフフフフフフフ……ブヒッ」
フェンライは高笑いの最後に豚鼻を鳴らした。
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