第20話「大魔王ケイオス」

「大魔王、ケイオス……この世界と同じ名前なのかよ?」

 トウマがまた大魔王ケイオスを睨む。


「同じ? ……まあいいだろう。さあ勇者と聖女よ、死ぬがいい」

 ケイオスが何処からともなく出した杖を持って身構えるが


「え? あのちょっと待て」

「何だ?」

「聖女って何の事だよ?」

 いや、イリアの事だとは思うが、神の目でもそんな事は見えなかった。


「知らぬのか。ならあの世で知れ」

 ケイオスはそう言いながら杖から二人目掛けて怪光線を放つが


「えーい!」

 イリアがすかさず閃光魔法でそれを相殺する。


「ふむ、ならばこれはどうだ?」

 ケイオスの杖から無数の黒い塊が現れ、それが二人を襲う。


「そんなの、はあっ!」

 イリアの掌から魔法力が放たれ、それがバリアーとなってそれを凌ぎ、そして


「でりゃあ!」

 トウマが勢い良く飛び上がり、剣を振り上げて大魔王に斬りかかる。

「ふん!」

 ケイオスはそれを杖で受け止め、そして

「くらえ!」

「ウワアアアーー!?」 

 黒い稲妻を放つとそれがトウマの全身を焦がした。


「ああっ、ト、トウマー!」

 イリアがトウマの側に駆け寄り、彼を抱き起こした。

「だ、大丈夫。死んじゃいねえよ」

 だがダメージは深く、体を動かせないようだった。

「……うん、少し休んでて」 

 イリアはトウマを寝かせ、ケイオスと向き合い


「このやろー! これでもくらえー!」

 両手から連続で炎を、吹雪を、烈風を、電撃を放った。


「何? ……ぬおおおお!?」

 ケイオスはそれを受けて後退った。


「え、イリアの力が上がってる?」

 トウマは上半身を起こし、イリアが放った魔法の威力に驚いていた。

 おそらく怒りと悲しみで魔法力が通常以上となったのであろう。


「ぐ、ふふ、流石聖女。やるな」

 ケイオスはイリアを見据えて言う。

「あんたあたしを聖女って言うけどさー、それって勇者と対になる存在でしょー?」


「え? ……あ、やっと見えた。聖女ってイリアの言う通り」

 トウマは驚きながらイリアを見つめていた。


「そうだ。そして貴様等はまだ覚醒していないが、もししていたとしても、余を倒す術には気づかぬだろうなあ」


「倒す術って何よ? って教えてくれる訳ないわねー。でもさー」


 イリアが掌から六つの光を出し、それが彼女の前で六芒星を描いた。


「ぬ、それは!?」

 ケイオスの表情に焦りが見えた。


「そう。極大六芒星呪文よー。これならあんただって吹っ飛ばせるはず!」


 全呪文の頂点に立つ極大呪文、それは誰でも使えるわけではない。

 才能があっても辛く苦しい修行に耐えてようやく身につけれるもの。



「ぬ、ふふ、やれるものならやってみろ!」

 そう言ったケイオスはブツブツと何かの術を唱え始める。


「じゃあ……はああっ!」

 六芒星全体から六色が合わさった光線が放たれ、それがケイオスを襲った。


「はあっ!」

 ケイオスは杖を掲げ、その先から黒い光線を放ったが


「無駄!」

「な、……ウオオオオオーーー!?」

 黒い光線は六色光線に飲み込まれ、それが弱まる事なくケイオスをも飲み込んだ。



「ふう……やったわー!」

 イリアがガッツポーズをとって喜ぶが


「待てイリア、まだだ!」

「え?」


 ゴゴゴ……


- フハハハハ。その通り、勝ったと思うのはまだ早いぞ -


 ケイオスの声が何処からともなく聞こえてくる。


「ラスボスのお約束、第二変身か。今度はどんな」

  

- カアアアッ! -


「な!?」

「ええ!?」


「どうした? 余の姿に驚いたか?」

 そこにいたのは全身が銀色で、体格はトウマよりも小さな男だった。


「な、何か弱く見えるが、でも」

「さっきよりも気が上がってる」


「フ、では」


 そこからは一方的だった。


 ケイオスの圧倒的な強さに敵わず……

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