第7話「本当にどうにもならないのか?」

 俺達は代官の屋敷の前にいた。


「さて、どうやって忍び込む?」

 俺が屋敷を見ながら皆に言うと

「それならあたしに任せてよー」

 イリアが手を挙げて答えた。

「ん? どうするんだよ?」

「この屋敷って結界も何もないからさー、あたしの転移呪文で中に入れるよー」

「なんか反則な気がするな、それ」

「いいじゃないのよー。早くしないと女の子達がナニされるか」

「あ、ああ。じゃあ頼む」


 何か釈然としないが、俺達はイリアの魔法で代官の部屋の前にワープした。




 そして

「ふふふ、エチゴ屋。お主も悪よのう」

「いえいえ、お代官様こそ」


「お決まりの台詞言ってんじゃねー!」

 俺は思いっきりツッコミ入れながら代官達がいる部屋に入った。


「な、何だ貴様等!?」

「ふん、てめえら悪党を退治しに来たんだよ」

「なんだと!? ぐぬぬ、者共出会えー!」

 悪代官がお決まりの台詞を叫ぶ。

 そしてどこにこれだけいたんだという数の侍が現れた。


 だが

「キシャー!」

 マウが次々とそいつらを引っ掻き

「はあっ!」

 小次郎さんが峰打ちで次々と倒し、あっという間に悪代官と悪徳商人だけになった。

「さあ、どうする?」

 俺が二人に聞くと


「おのれ……こうなったら奥の手だ!」

 奥の手って何だ? チンピラみたいに逃げ出すのか?


「はあっ!」

 なんと悪代官が変身し、黒い鬼と化した!


「ガーッハハハ! この姿になったからには生かして」


 チュドーン!


「ア……もう少し暴れてからにしろ……ガク」

 悪代官はあっという間に黒焦げ(元から黒いので分かりにくいが)になった。


「どう? 僕のミサイルは」

 どうやらニコがぶっ放したようだ。

 てかこいつ最強かもしれんな。


「ひいい!? お、お許しを~!」

 それを見た悪徳商人が土下座して命乞いしてきた。


「攫った人達を返せ、そうすれば命だけは助けてやる」

 小次郎さんが悪徳商人を睨み付けながら言う。

「は、はいい!」

 

 こうして攫われていた女性達は皆解放された。

 

 ああ、悪徳商人と悪代官は首都から来たという兵士に連れて行かれた。

 あっちは西洋風の兵士だった。ホントごちゃ混ぜな世界だな。

 

 すると

「あれ~? もしかしてニコ君ですか~?」


 そこにいたのは赤茶の長い髪で目がぱっちりとして

 服装は修道服……おお、リアルに若いシスター見たの初めてだ。


「あ、レイカさん!?」

 お、あの娘ニコの知り合いか。


「レイカさん、どうしてここにいるの?」

 ニコが彼女の側に駆け寄って尋ねた。

「わたしはあの人とここに迷い込んだんですよ~。で、はぐれちゃった時にあいつらに捕まっちゃって~」

「え? レイカさんならあいつらくらいやっつけちゃえるでしょ?」

「抵抗したら他の人達が危ないと思って~」

「あ、そうだったんだ。それじゃ仕方ないよね」

 

 つか、そんなに強いのかあの娘?

 って、もしかして?


 神の目で調べてみたらそうだった。

「そうだにゃ~。彼女とその旦那さんもあたし達の仲間だにゃ~」

 は? 


「えと、彼女って既婚者なのか……まだ十九歳かよ、おい」

 いや、異世界だから関係ないといえばそれまでだが。


「そうだにゃ。そして女の子はこれで打ち止めだにゃ。だからあんたはイリアだけ狙うだにゃ」

 マウがそんな事を言ったが

「お前は狙っちゃいかんのか? 俺を襲おうとしたくせに」

「……私は普段はともかく、心は彼以外誰もね」


 え?

 

 ……あの~、見えたかと思ったらむちゃくちゃ美化して惚れまくってますな、その彼に。


「ふふふ、間違っても彼に惚れないでね。もし手を出したら」

 マウがドス黒いオーラを出してきた。

「俺は女の子がいいんだよ! しかしそんなに惚れてんなら何で今一緒にいないんだ……あ」

 

 そんな理由だったのか……。

 俺は心底申し訳なく思った。興味本位で見た事に。

 

「ううん、いいにゃ」

 マウは許してくれたが、その顔は今にも泣き出しそうな……。


 それ、本当にどうにもならないのか?




「あ? あの猫耳の人」

「レイカさん、マウさんの事知ってるの?」

「……はっ? い、いえ。気のせいでした~」

「あ、そうなの? 何か知ってるっぽかったけど」


 ニコとレイカさんが何か話していた。

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